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【映画】 『赤んぼ少女』 & 楳図かずおトークイベント!

2008.08.25 Monday

仕事と雑務に追われていた数週間がやっとひと段落して、先日、妹のお友達の主宰するパーティに誘われ、鼠先輩のライヴ(in atom)を観賞(笑)。あの『六本木 〜GIROPPON〜』って曲、これでもかってっていうくらいしつこく転調してくるところとか、フェードアウトして終わったかと思うとまた盛り上げてくるところとか、歌謡曲をメタ視点(ってほどでもないのだが…)でなぞっているところ、確かに笑えますね。しかも歌い出しが、「アナタにもらったきび団子 ホームでカラスがつついてる」って。んー。作詞した人、よく「きび団子」が出てきたなぁ〜と尊敬。だって、「きび団子」って言葉が出てきた瞬間、すべてがザーッと染まっていきますよね、「きび団子」色に。蛍光ネオン鮮やかなギロッポンさえも、「きび団子」色に。美しくもなければ鮮やかでもなく、毒々しくもさえない、素朴な田舎っぽーい、薄茶色に。で、表面にそこはかとなく白い粉が噴いてたりしてねー。


というわけで、ウメズです。というと、やっぱりあれですよね、紅×白。「ウメズ」という言葉が出てきた瞬間、すべてがザーッと染まっていきますよね、紅×白に。どんなに悲惨だったり醜悪だったり奇怪だったりするような作品でも、それがウメズってだけで、目の前が紅×白の縞々になる。紅白。それは、ご祝儀の色。おめでたいときの色。

そんな「この度は、誠におめでとう御座います!」と、誰彼かまわず口走ってしまいそうな場所に行ってまいりました! 楳図かずおの傑作『赤んぼ少女』の実写映画上映&ウメズトークイベント(@シアターN渋谷)。

トークイベントは、『赤んぼ少女』を監督した山口雄大監督と、小学館の雑誌「IKKI」の江上編集長と、ウメズ先生の3人。紅×白の縞々のTシャツ、紅×白の縞々のキャップのウメズ先生、登場するなり、いつものお手製グワシハンド(自作できます→こちら)で、当然「グワシ!」。で、江上編集長が「この『赤んぼ少女』というタイトルは…」と話し始めると、横からすかさず、「あかんべ、少女じゃないですよぉお〜!」と、ご自身あかんべをしながら意味不明のボケ投入。さらに、今回装いも新たに発売された『赤んぼ少女 』(小学館)の装丁の話になって、江上編集長が「この本には仕掛けがいっぱいありまして…」と説明し始めると、またウメズ先生が横から「エッ! 仕掛けって、まさか落とし穴とかじゃないでしょうねっ?!」ですって。キャハハ! あの、これは、去年の大晦日に放送された『ガキの使いやあらへんで大晦日年越しSP!』(日テレ)で、ウメズ先生が思いっきり落とし穴に落っことされて、「あのご老体で大丈夫なのか?!」「日本漫画界の(秘)宝があそこまで体を張る必要があるのか?!」などなど、先生のお体を心配するファンが続出し、ウメズHPで「大丈夫です」メッセージが掲載されるハメになったというエピソードをふまえての、ボケ、です(笑)。そんなナイスなボケをかますウメズ先生を拝見し、「あぁ、ウメズ先生、ボケが上達したなぁ……」と、先生の成長っぷりをしみじみ嬉しく思った私でした。

しかし、ウメズ先生、3人のなかでダントツ年長さん(今年72歳)だっていうのに、一番動くし、一番しゃべるし、一番ボケるし、一番大騒ぎするし、一番テンション高い。去っていくときも、何だかバランスのとれないアワアワした感じで、またもや「グワシ!」。そのキョロキョロ&ソワソワと落ち着かない挙動不審っぷりが、ホント可愛いかったぁ……。もう心つかまれまくりでした!!



映画『赤んぼ少女』は、ものすごく丁寧につくられた、正統派ホラー・ムーヴィー。たとえるなら、チェコ映画の最高峰(と勝手に私が思っている)『モルギアナ』(レビューはこちら)と、イタリアン・ホラー映画の最高峰(とおそらく誰もが認める)ダリオ・アルジェントの『サスペリア』『フェノミナ』、この3作品を足したものをわざわざ4で割って、そのあいちゃった隙間に、デイヴィッド・リンチの『エレファントマン』と、大人気(でも低予算)なホラーシリーズ『チャイルド・プレイ』を加算した感じです(って、わかりにきーよ…)。


ストーリーは、以下のとおり。
葉子(水沢奈子)は、孤児院で育った15歳の美少女。ある時、実の父親(野口五郎)に発見され、森のなかにある大きな洋館に引き取られることに。ところが、実の母親(浅野温子)はうつろな目でぬいぐるみの人形をあやすばかりで、葉子を娘だとは認めてくれない。おまけに、葉子を狙う誰かのブキミな気配が……。そう、それは、葉子の双子の片割れとして生まれ、醜い容姿に赤ちゃんのまま成長しない体をもった少女、「タマミ」だったのだ! タマミは美しい容姿をもった葉子に嫉妬し、恐ろしい行動に出る。かくして、森のなかの洋館を舞台に、惨劇の幕は降りた……!





そう、原作を読んだことある方なら絶対に思う、「タマミも実写なの?」ですが、「醜く生まれてきてしまったがゆえにモンスターと化す15歳なのに永遠の赤ちゃん、タマミ」は、パペットとVFXでヴィジュアル化。といってもタマミの表情は、AV女優で最近では井口昇監督の『片腕マシンガール』(見たいー!!)にも出演している亜紗美が担当し、パペットと合成させているらしいんですが。

原作のタマミは意外と人間くさかったんですけど(一応は…)、映画のタマミはさらにモンスター化。だって、赤ちゃんだっていうのに、どんだけ筋肉ついてるのか、巨大化した右手だけで縦横無尽にピョーンピョーンピョーンピョーーーン! とすごい飛距離でジャンプし、必ず背後から飛びかかってきて、「あうー!」みたいな赤ちゃん奇声とともに首にかぶりついてくるんですから、コワすぎ。チャッキーかよ? ていうか、チャッキーよりコワイ。顔が。エレファント・マンに近いかも。ちなみに、エレファント・マンのモデルになった実在の人物ジョセフ・メリックも、右手が肥大していたんですね。偶然の一致?


それにしても、この物語に込められたテーマは、非常に深い。もし自分がタマミのような怪物的外見をしていて、体も赤ちゃんサイズから成長しなくて、右腕だけ巨大化してしまっていたら……? そんなこと、あるわけないかもしれませんが、そう思うと何だか息苦しくて、とてもまともに見ることなんてできません。

私、この原作を読んだのは17、18歳ぐらいだったと思うのですが、もう辛くて苦しくて、その時は1度しか読めませんでした。怖くてじゃなくて、辛すぎて、苦しかった。タマミの苦悩が、ダイレクトに自分を映しているような気がして。だって、その年頃の女の子の頭の中なんて、半分以上は自分の容姿(オシャレやダイエットも含む)のことでいっぱいじゃないですか? 違うかしら。この年頃というのは、とかく理想主義に走りやすいもの。私なんて、本気でエマニュエル・ベアールとかイザベル・アジャーニを理想とし、「それに比べて自分は何故こんなに醜いんだろう?」って、思っていましたから(笑)。またよりによって、エマニュエル・ベアールとは。天使とデートですよ? 美しき諍い女ですよ? 理想主義も極まれり、っていうか、単なるバカだっただけじゃない? そんなんでしたから、17、18の私はマトモに恋愛もしてませんでしたねー。だってその頃の私、自分以外のことなんてあんまり興味なかったんだもん(笑)。あ、もちろん、今は興味ありますよ! だって、自分を知るって、結局「他者を通して」ということでのみ実現可能なことなんじゃないか、と今は思うからです。

そんなわけで、タマミという他者を通して、「自分が自分だと思っているその自分というのは一体何なのだろう?」と、改めて考えさせられてしまったのでした。だって、タマミのような超怪物的容姿だったら、私は自分を自分だと思えるだろうか? 答えは、ノー。でも人間って、「この自分は自分ではない!」なんて自己否定しながら生きていけるはずがないんです。あたかも自己否定しているように見える人だって、自分のどこかに気に入っている部分があるはずなんですよ。じゃあ、どうするの? 死ぬしかないの? でもそんな簡単に死ねるの? 死ねないならその自己否定のエネルギーをどうやって解消するの? タマミが、鏡台に向かってルージュを引き、まったく似合っていない自分が映った鏡を叩き割る、あのシーン。タマミの、「ただ綺麗に生まれてきただけなのに……」という、葉子への呪詛のようなあの言葉。そんな苦しい問いのようなものを突きつけられて、答えのない迷路に閉じ込められたかのような胸苦しい思いをする、それこそがホラーの、恐怖の、本質なのかもしれません。

そんなホラーな恐怖体験をしたい方、ぜひ『赤んぼ少女』を見てください! って、そんな胸苦しい思いなんかしたくないに決まってるだろ、っていう方も、ぜひ! というのもですね、あまりにもホラー・ムーヴィとしての完成度が高いため、そんな深遠なテーマなんてほとんど気にならないようになっていますから。「美少女の受難」というある種のホラー・ムーヴィの定型にきっちりはまっていますから、ちゃんとハラハラドキドキ、それだけで充分楽しめるようになっていますから。皆様ご安心を! 老若男女にオススメ! って、ガッツリ「R15」指定ですけどねー(笑)。




そんなわけですが、そう、いくつかウメズグッズを購入したんです! わーい。(以下は自慢コーナーなので、興味のない方はトバしてください)



赤んぼ少女ライター!

タマミ 「静かに歩かないと油がこぼれて燃え移るわよ」
葉子 「あつい!」

どんなシチュエーションだ?

欲しい方は、通販もあります→こちら




赤んぼ少女ミニタオル! 

おくるみ型に包んであるところが、イヤですね。
でも私、最初、「これってフライドポテト型かな?」と思っていまして。フライドポテトの入れ物に入ってるのがタマミ、って、そっちの方がイヤ過ぎですね。

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楳図パーフェクションシリーズ9 『赤んぼ少女』(小学館)

装い新たに再刊された『赤んぼ少女』。この作品は、これまで『赤んぼう少女』『呪いの館』というタイトルで単行本化されていましたが、その完全版がコレ。どこが完全版なのかと言うと。たとえば、連載時の扉絵を、ウメズ先生の自宅倉庫から探してきてわざわざ入れたとか。かつて単行本化するにあたって、連載時の重複部分を削除してコマをつなげるためにセリフを変えてしまったところを、連載時のセリフに戻したとか。

しかも、特筆に価するのが、装丁が、天才ブックデザイナー・祖父江慎(そぶえしん)さんだということ! 祖父江さん、大大大好き〜〜〜〜!!!!!! 私の永遠のバイブル『悪趣味百科』(ジェーン&マイケル・スターン 著/伴田良輔 訳)の、あのクレイジィでサイケデリックかつラヴリィなデザインは、祖父江さんにしか実現できません(だって、本文の「う」と「ん」と「こ」だけ、太字ですよ。全ページ。超マジメな研究書なのに笑。いいのかそれで?!)。しかも素晴らしいのは、祖父江さんが「愛の人」だということです。本への愛。書き手への愛。読者への愛。いろんな愛をかたちにしてくれる人。そんな祖父江さんが、ウメズ本をデザインしたということ自体が、「生きていて良かった」レベルの奇跡。そんなふうに思うのです……あ、今、泣きそう……。




そして! 会場でこの『赤んぼ少女』を購入した先着50人がゲットできた、ウメズ先生直筆サイン色紙がこれ! キャー! 

もう嬉しくて嬉しくて嬉しくて、ツーショット撮影。もう抱きしめて寝ちゃいたいくらい。これは、私の一生の「家宝」になるかと。って、将来「家」を構える見通しは全くありませんけど……。とりあえず、ウチの祭壇に祀っておこうと思います!







『赤んぼ少女』(2007年 日活)104分・R-15
監督:山口雄大 
原作:楳図かずお 
脚本:小林弘利 
特殊美術監督:西村喜廣 
VFXスーパーバイザー:鹿角剛司 
音楽:原田智英 中川孝 
出演:水沢奈子 野口五郎 生田悦子 浅野温子 斎藤工 板尾創路 堀部圭亮 亜紗美





◆『蛇娘と白髪魔』(1968年 大映 湯浅憲明監督)
 実は『赤んぼ少女』、40年前にも映画化されています。
 ウメズ先生の傑作『ママがこわい』と『赤んぼう少女』を原作とした、
 とてもよく出来た良質のホラー・ムーヴィ。
 ウメズ先生もタクシー運転手役で登場。まだお若いです……!


◆『おろち』 9/20(土) より全国ロードショー!
 ウメズの大傑作が、続々実写化!
 監督は、鶴田法男。出演は、木村佳乃、中越典子、谷村美月、山本太郎、嶋田久作など。
 詳しくは、こちら。公式サイトは、こちら
 

◆「UMEZZ.com
楳図かずお公式サイト。


◆祖父江慎さんのインタビューページ。
 「ほぼ日刊イトイ新聞」内「本の装丁のことなんかを祖父江さんに訊く。
 「Graphic Arts Center,Toppan」内「Creator's file




ウチの祭壇に安置中。

左から、ショパン、ウメズ、バッハ。
我が愛しの天才シリーズ♪



 

 
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