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【歌舞伎】 玉&海老の『義経千本桜』 3  〜海老蔵に見る、男の「可愛さ」について。

2008.07.25 Friday

前回(「歌舞伎のタイトルに、ときめく方法」)と前々回(「日本最大の非リアルワールド、歌舞伎」)に引き続き、歌舞伎座で上演中の『義経千本桜』について。やっと、海老蔵について語れそうで、嬉しいです(笑)!

そうなんです。私が思わず海老蔵に恋心を抱いてしまった、ということは、前回チラっと書きましたが。でも、こればっかりはしょうがないと思うんです。私が悪いんじゃないと思います。だって、一番前の真ん中の席だったので、ホントにすぐもう目の前に、海老がいるんですよ。数メートル先に、海老が。手をのばせば届くような位置に、海老が。笑いかければ笑い返してくれそうな位置に、海老が。くしゃみをすれば「大丈夫?」と言ってくれそうな位置に、海老が。あくびをすれば「夜更かしはいけないよ」と言ってくれそうな位置に、海老が(もういいよ笑)。私の目は確実に「ハート型」になっていたに違いないと思うんですが、それを海老に見抜かれて「ちえぇッ、ザコがうぜーな」とバカにされてないか心配です(なワケねーだろ)。

実は私、今まで、海老蔵って「フツーに綺麗な顔してるし、フツーにカッコイイよね」とは思ってましたけど、「フツーにカッコよすぎて、私が好きになる理由が見当たらないない」なんて思ってまして。海老について「私が好きになる理由」って、これまたスゴイことを言い出す(笑)。でも、誰かを好きになるのに理由はないとはよく言いますけど、やっぱり絶対あるはずなんですよ。その人を好きになることで得られるメリット、っていうのが。それは芸能人にしろ、実際の恋愛にしろ、同じで。たとえば、自分に好意をもっている人をいつの間にか好きになっちゃう、っていうのはよくある話。これだって、自分の価値を認めて崇拝してくれる、その気持ちよさったらもうかなりの快楽なわけで。でも、その快楽こそが恋愛の根本。で、フツーはそんなメリットを自覚することないまま、ポーンと「これが愛だ!」「これが運命だ!」とキラキラしい世界にひとッ飛びしちゃうんですけど。ま、その方が恋愛はうまくいくと思います(笑)。

では、私が『義経千本桜』で、海老を好きになってしまった、その理由は何か? どこに私にとってのメリットがあったのか? それは、海老がカッコよくて美しくて男らしくて凛々しかったから、ではありません。カッコよくて美しくて男らしくて凛々しい、なんてくらいでは、私は人を好きになりませんから(あ、たまに例外もありますけど……って、そんな詳細はどうでもいい)。

今回、海老蔵が演じた「佐藤忠信/実は源九郎狐」は、同じ『義経千本桜』内でも、そのシーンによってキャラクターが微妙に変わっていくんです(専門家が見たらどうかわかりませんが、私にはそう見えました)。たとえば、玉&海老の踊りが素晴らしい「吉野山」の幕では、色っぽくてセクシー。「川連法眼館」の幕では、男らしくて凛々しい。さらにキツネの本性を現してからは、哀れで可憐。つまり幕を追うごとに、セクシーだったり、カッコよかったり、男らしかったり、凛々しかったり、いわゆる男性の魅力というものをこれでもかーというくらい次々に出してくる。そして最後のシーンで、ドーン! と出してくるのが、「可愛さ」、なんですよー! キャー!! ハイッついに出ましたーッ! とジャパネットたかた(orジャワネットたかな)ばりの高音で叫んだ人が歌舞伎座にいたとしても許す。

佐藤忠信、その本性は実はキツネ、というそのワケは。静御前(義経の恋人)が持っていた鼓(つづみ)が、キツネの両親の皮(!)でつくられたものだったため、父さん母さんが恋しくて、佐藤忠信にバケてまで静御前につき従っていたのだ……ということが判明。涙なしには語れない、親を思う子の情愛。その泣きかきくどく、そのキツネの姿が、本当に哀れで、可哀想で。そういえば私は常々、可哀想と可愛いは、感じる脳の場所が近いんじゃないかと思っておりまして(それについて大昔に書いたなぁ〜 →コレ)、あまり賛同を得られていないのですが、どうでしょうか。

そんなわけで、さんざんカッコイイ男らしいところを見せつけてきたくせに、最後の最後で、可哀想さ、可愛さを発揮する、海老。ズルイでしょ、それ! そう来たか! 油断してた!! って感じでした。それこそ「ギャップの魔術」「はぐらかしの術」「看板に偽りアリ」。これにヤラれない女はいないです、絶対。

男の人がふと見せる「可愛さ」というものに、意外と女性は弱いものなんです。一生懸命で、頑張ってて、強くて、男っぽくて、キリリとしてて、ちょっと冷たくて、っていう人がふと見せる「可愛さ」。そんなものに、女性は弱い。少なくとも私はかなり、弱い(笑)。じゃあ、その男性の「可愛さ」のどこに女性側のメリットがあるのか? と言いますと。それは、自分の価値を発揮できる場の発見、なのではないでしょうか。

女性は本能的に「何かを可愛がりたい」欲望をもっているものだと思いますが、可愛がるって、「他人のため」というよりも「自己満足のため」に近いようにも思うんです。そしてそれは、「自分の価値を発揮できる」ことによる自己満足なのではないでしょうか? 男性がふとしたときに見せる可愛さ、それは何でもいいんですけど、たとえば、いつもキリッとキメてる人がうっかりズボンからシャツが出てたとか、すごいキレ者と評判の人がボーリングでカラぶって必要以上にうろたえてたとか(笑)。そういう面を見たときに、女性はそこに、「自分の価値を発揮できる場」「価値ある自分の存在を知らしめることができる場」を、勝手に見出してしまうのではないか、と思うのです。もちろんそれはホントに勝手な思い込みで、本人にしてみたら、シャツなんて自分でサッサとズボンに突っ込めばいいし、ボーリングが下手なんて別にどーでもいいよ、って思ってるかもしれないんですが。でも、そんなところに「私が何かしてあげたいもの」「私が何かしてあげられるもの」を発見してしまったとき、それを「可愛い」という言葉で表現する、それが女性なのかもしれません。でも、そういう心の動きって、男性も同じかもしれないですね。

でも、男性の場合は、いつも可愛い、っていうんじゃダメなんですよねー。あんまり一生懸命じゃなくて、キリリとしてなくて、でもいつも可愛いだけは可愛い男性、っていうのも「可愛いなー」と思いますけど、「はいはい、アナタは可愛いのね。よしよし」とはしたくなるけど、ギュッと心をつかまれるようなトキメキはなかったりする。あ、でも、そういう人がふとしたときに頼もしかったり一生懸命だったりすると、それはそれでグッとくるかもですが。

ということは、「可愛さ」というのは、演出するものじゃないということなのでしょう。特に男性における「可愛さ」というのは、本人が「演出するもの」じゃなくて、他人が「感じとるもの」。つまり、男性の「可愛さ」は、女性(もちろん男性でもいいんですが)の感受性次第、ということになりますから、本人がコントロールして可愛くしようとしても無駄なのです、残念ながら。それよりは、お仕事でも好きなことでも何かを一生懸命やること、精一杯他人に向き合うこと、そんなふうに「誰でもない自分が、生きる」ということに真剣になっていればなっているほど、「可愛さ」もこぼれ落ちやすくなるものなのではないでしょうか。本人はそんなオノレの可愛さを見せようなんてこれっぽっちも考えず真剣になっている、そんな目の前に必死になっているがゆえに、脇が甘くなってふとした瞬間にズボンのポケットからポロッと「可愛さ」がこぼれてしまう、それを女性(男性でもいいですが)がこっそり拾い上げる。そんなものだと思うので。

あ、でも、女性はわかりませんよね。演出してでも作ってでも、「可愛さ」を見せたほうが、男性に喜ばれるって言いますから。っていうか、男性って演出かどうか見抜けないって、ホントですか? 何でかな? えーと、何でなんですか(笑)? そこが男性の可愛いところなんだろうなーとは思うのですが、女性からするとホントに不思議。

どうして男の人ってそうなんだろう、何でなんだろ、あ、そういえば昔こんなことがあって……と、やっぱり地に足つけたリアル会話に始終してしまうのが、女なんだよなー、そんなつまんないハナシばっかりしてさー。って思うかもしれませんが、違いますよ!! 今回『義経千本桜』を一緒に見に行った、イラストレーターのコダカナナホさんと会場出た瞬間盛り上がったのが、「海老、カッコイイ! スゴイ! あれだったら付き合いたい! あれだったらどんなに女とっかえひっかえでもいい! あーでも私なんか相手にされないよなー」みたいな、ホント「アンタには(永遠に)関係ないだろう」な妄想話でしたから(笑)。さらに、その後、複数の人(女性)に海老の話をしましたが、みなさん口をそろえて「あれなら、誘われたら絶対ついて行くよね!」「一回でも相手にされたら、捨てられてもいいよね!」「殺人以外、どんなにヒドイことしても許すよね!」……と、みなさん、ひじょーに、妄想めいた言葉を返してきてくれたのが、もう嬉しくて(笑)。つまり、女子だって、アイドルを見ながら「あれならヤレる」「あれはちょっと」なんて言い合ってる男子と同じく、非リアル会話をするのだ、ということですよ。妄想めいた非リアル会話へ引きずり込む力があるかどうか。これがもしかして、カリスマ性のある花のある役者の条件、なのかも、しれませんね! 

 


◆『義経千本桜』をめぐるトリヴィア。
この作品の主人公でもある佐藤忠信は、実在した人物で、源義経の忠実なる家来なんですが。なんと、岸信介佐藤栄作兄弟(両人とも元首相)は、佐藤忠信の末裔だという口伝があるらしい……。その岸信介の娘婿が、安倍晋太郎(元外務大臣)。その安倍晋太郎の息子が、安倍晋三(これも元首相)。ということは、安倍晋三こそが、今に生きる佐藤忠信の末裔ということか?! これから『義経千本桜』を見る方は、舞台を見ながら「美しい国ニッポン」に思いをはせてみてはいかがでしょうか?(私は知らなかったのでセーフでした)


◆ねんのためリンク。
玉&海老の『義経千本桜』 1  〜日本最大の非リアルワールド、歌舞伎
玉&海老の『義経千本桜』 2  〜歌舞伎のタイトルに、ときめく方法


◆同じく、玉&海老の公演について書いた過去記事。
玉三郎×泉鏡花まつり! 『海神別荘』の巻


◆最近発見した面白いサイト。
 「きままに写楽
 歌舞伎衣装を制作している方のブログで、
 衣装制作の過程が細かく写真で掲載されていて、すごく興味深いです。




 
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