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【映画】 桃まつり、桜まつり

2008.04.04 Friday

そろそろ桜も散りはじめた昨日、さくらさくら〜と口ずさみながら向かったのは、渋谷の映画館ユーロスペースで行われている、女性監督たちによる短編映画の上映会「桃まつり 〜真夜中の宴」。

ちょっと早めの時間に着いた私、ふと思いつきました。そうだ、そう言えばあのあたり、桜が綺麗なんだったー。かくして目の前に現れたのは「桜まつり」と書かれたぼんぼりの、フューシャピンクの列。夜空に咲く桜と、桜吹雪と、花びらの絨毯。……とは言うものの、あたりはパーフェクトなまでの「渋谷状態」。桜並木の前には、コンビニ、ドラッグストア、チェーンの居酒屋。見上げれば、看板、高速道路、走るトラック。行きかうのは、黒服系にいさん、水風味ねえさん、歩きタバコのスーツ氏、タクシー、またタクシー、たまにバイク便。……趣き、ゼロ。そもそも、誰も桜とか見てませんしねー。

だけど。今年もいろいろな場所で桜を見ましたが、この渋谷での桜に、最も心を動かされてしまいました。汚いもの、醜いもの、下世話なもの、馬鹿馬鹿しいもの、五月蝿いもの、悪趣味なもの。そんなものに囲まれて生きていかなくてはならないのが、日本(特に東京)で生きていく私たちの宿命なのですもの。そんな悪趣味ななかにあって、超然として花を咲かせて、おびただしいほどの花びらを散らせて、風にまかせてもうもうと花吹雪を舞わせて。アスファルトの上に散らした大量の花びらを、行きかうタクシーが蹴散らしても蹴散らしても、平気でまた花びらを降らせて。あー、なんて図々しくもカッコイイんだろう。この桜、人間だったとしたら絶対、女だな(笑)。三十路半ばは軽く超えてるね(笑)。

なんてどーでもいいことを考えながら、桜並木の目の前にあるエクセルシオールのテラスで、お花見を楽しみました。余裕をもって行動するって、いいわぁ〜。なんて悦に入っていた私、ハッと思い出しました。そうだー、そう言えばユーロスペース、移転したんだったーっ!!! かくして私は桜ヶ丘から円山町まで、超ダッシュで走らざるを得なかったのでした……。




そんなわけで、「桃まつり 〜真夜中の宴」。以下HPからの抜粋。
『真夜中の宴』で腕を振るったのは、9人のオンナたち。そこには女性的な“弱さ”や“恋愛体質”ではない、どんな状況にあっても強く生き抜く人間のしたたかな本性が描かれる。

この、「女性的な“弱さ”や“恋愛体質”ではない、どんな状況にあっても強く生き抜く人間のしたたかな本性」というところに、共感しました。ちょっと前にも、映画作りに関わっている若い女の子と話していて、そんな話題が出たんですけど。男性視点から描かれる女性って、な〜んかみんな「愛だけが私のすべてなの…… (風、横から吹いて髪乱れる)」みたいな、恋と愛と性だけで人生が構成されているような、非現実的な女が多いよね〜と(笑)。仕事とかどうなってんのかなぁ、趣味とかないのかなぁ? みたいな(仕事も趣味も特にない……って、若いときはいいけど、30過ぎたら老けるの早くなりがちかと思いますけどハイ余計なお世話です)。男からしたら女ってそう見えるのかな? それとも、そういう女にふりまわされたい願望なのか(笑)?

まぁたぶん、「女ってよくわかんないから、そういうことにしとこう。ヤツら恋愛とか好きみたいだし……」っていう単純な「サジ投げ状態」ってことが多々あるような(笑)。でも、女性からしたら、男性だってよくわかんないですよ〜。でも、それを言ったら性別関係なく、他人ってホントにわかんないですし。で、さらに言えば、困ったことに、自分のことだってよくわかんないんですよねぇ、これが(笑)。そんなわけで、異性や、他人や、そして自分をも理解したい。つまり、人間って何だろう? そんな切実な思いから、人は文学や映画を求めるのではないでしょうか。

ちなみに、私が「リアルな女子(の魂)を描けてる!スゴイ!!」と思ったのは(異論はあるでしょうけど)、去年見たなかで最もクール&ホットだった映画『デス・プルーフinグラインドハウス』(レビューはこちら)。しかしタランティーノ、なんで女子のことがわかっちゃうかなぁ〜。タラのなかには女子がいるな、絶対。




今回、「桃まつり」で見た作品は、『感じぬ渇きと』『きつね大回転』『daughters』『あしたのむこうがわ』『希望』の5作品。いずれも「女性ならではの視点で」なんていうような甘さはなく、「人間としてのその人ならではの視点で」描かれていて、とても興味深く見ることができました。


感じぬ渇きと』(監督・脚本:大野敦子)で面白かったのは、作品のテーマとはズレるかもしれませんが、職員の若い男と、雇われ清掃員の中年男のテンションの差、物事における温度の差が、非常にサスペンスフルに描かれていたところ。お互いに相手の空気に合わせることもなく、平行線を描く2人。そんな空気に頓着せずしゃべり続ける若者と、口を閉ざす男。実はこういう状態って、日常茶飯事的にある。そんなとき、人は、どのようにその空気や感情の差異を感じ取り、どのようにそれに対処するものなのでしょうか。素直に戸惑う? 無いことにして放置する? ここぞとばかりに自分のペースを貫く? それとも自分を相手に合わせる? そんなときにその人の人間性が現れるのかもしれません(どれも良い悪いではなく)。


daughters』(監督・脚本:木村有理子)は、古い一軒の家が舞台。姉妹と幼なじみの男のあいだで交わされる会話劇。とても静かだけど、何かが迫ってくるようなぶ厚い空気感が、スゴい。何が迫ってくるのか? それは、最後に登場するガラスの壜に……。静寂のなかに突如立ち現れる、江戸川乱歩的な展開。そんな展開にミステリーやトラジックなものというよりも、ユーモラスなものを私は感じてしまいました。怖かったり壮絶だったり悲しかったりするものって、ときにはユーモアを帯びたものに変換される。でも、それによって人は、恐怖や悲しみから解放されることもあるのではないでしょうか。主人公の女性が庭でハンモックに揺れながら、ケイト・グリーナウェイのマザーグース絵本『窓の下で』を読むシーンも、危うい浮遊感があって好き。だぁれが殺したクックロビン♪ 


きつね大回転』(監督・脚本:片桐絵梨子)は、すごい傑作! 最近見た映画のなかでも、ダントツに面白かったです。キツネを退治しにある町を訪れた、便利屋の若い男女。稲荷神社前に油あげを置いてワナをしかけておくと、ワナにかかったのはキモノ美女。そのときから、便利屋の男は、美女に導かれて古い日本家屋を夜な夜な訪れることに……。はたして便利屋の女は、男を救うことができるのか? なんていうストーリーの枠組みも面白いのですが、その枠内を埋めるシーン展開や会話なんかに大胆な飛躍があって、バツグンに面白い。

たとえるなら、内田百里J・L・ゴダールを足して2で割ったような。リアルな世界から数センチ浮き上がってしまう感じ。リアルな世界から走り出ていく感じ。あ、でもそんな積極的な感じというよりは、リアルな世界からズルズルと後ずさっていく感じに近いかも……。ラストシーンの、「おかしいな、上っているのに、下に降りていくような」という男のつぶやきが、不思議なようでいて、私には逆に、異様にリアルに感じられました。そういうことってあるんですよね。生きていると。すべてが紙一重。すべてが表裏一体。そんな世界は、意外とリアルなものなのかもしれません。リアルから後ずさった先にあるのも、やっぱりリアル。そんな幻想奇譚。



そんなわけで、夜の渋谷。桜ヶ丘での「桜まつり」と、円山町での「桃まつり」、たっぷり楽しんできました。夜の桜吹雪に乗じて、私もキツネになって誰か化かしてやろうかな〜などと考えつつ(笑)。なんて、私にはそんな技術も能力もあるわけがなく、たぶん私なんか、いとも簡単に化かされちゃうタイプだわ。騙され上手。って中島みゆきかよと自分ツッコミを入れて一人でニヤニヤ笑う、まさにひとり上手な私でした(薄気味悪いとか言わないように)。




◆「桃まつり 〜真夜中の宴
 3/29(土)〜4/11(金) 21:10〜
 渋谷ユーロスペースにて。
 当日¥1000
  ・壱の宴 3/29(土)〜4/2(水)  
  ・弐の宴 4/03(木)〜4/6(日) 
  ・参の宴 4/07(月)〜4/11(金) 


◆今回私が見たプログラムは、弐の宴(〜4/6まで)。
 詳細は以下のとおりです。

『感じぬ渇きと』 (11分)
監督・脚本:大野敦子(『ギミー・ヘブン』アシスタント・プロデューサー/『パビリオン山椒魚』プロダクション・マネージャー)/出演:酒井健太郎、峯山健治、玉川瑠海
深夜のスポーツジムで爆発に遭遇する男。その偶然から死んだ娘を思い出す。

『きつね大回転』 (22分)
監督・脚本:片桐絵梨子(『INAZUMA稲妻』『死なば諸共』脚本)/出演:松元夢子、圓若創、石川美帆
現代を舞台に繰り広げられる昔ばなし。きつね退治はできるのか?!

『daughters』 (24分)
監督・脚本:木村有理子(『犬を撃つ』<2000年カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン正式出品>)/出演:川尻麻美夏、川尻 麦、扇田拓也
母の葬儀で久しぶりに顔を合わせた姉妹と幼馴染の男、彼らは秘密を共有していた。

『あしたのむこうがわ』 (15分)
監督・脚本:竹本直美(『夜の足跡』制作)/出演:安田 暁
不慮の事故で息子を失いながらも前向きに生きようとする男。

『希望』 (12分)
監督・脚本:深雪(『demonlover』『人のセックスを笑うな』制作)
ただ待ち続ける……終わったはずの恋をひとり持て余す男。


エクセルシオール・カフェ
 某シアトル系カフェへのパクリ感の潔さに感服!
 ということで気に入っているExcelsiorCaffe(ドトール系列)。
 桜ヶ丘店のテラス席、お花見の超穴場です。
 花吹雪を体験したければぜひ!
 場所はここ

 
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