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【映画】 『喜劇 競馬必勝法 一発勝負』

2007.11.08 Thursday

笑いにはいろいろな種類がありますが、私がよくしてしまうのが、思い出し笑い。ある出来事に遭遇して、その時はそれほど爆笑していなくても、時間が経つとともにおかしくて仕方なくなってきて、ついつい一人で噴出してしまうことが多い私。思い出し笑いをする人はヤラシイ……って、昔誰かが言っていたような気がするのですが、どうなんでしょうか? 私って、ヤラシイのでしょうか?(知るか)

最近、私が思い出し笑いをしてしまったのは、ある男性が私の顔をしみじみと見つめて、「ナギさんとこんなに近くに顔を寄せて話をしてるのに、全然ドキドキしないのはどうしてだろうねぇ? 不思議だねぇ」と言った後、おもむろに、「男をドキドキさせられないのって、女としてどうです?」とマジメな顔をして問いかけてきたこと。もちろん、その質問自体が面白かったのではありません(面白いわけがない笑)。何がおかしいって、そんな失礼なことをマジメな顔して問いかけてきた、その人の「底抜けな天然っぷり」がおかしくって。普通だったら絶対ムッとしてるはずなんだけど、時間が経つとともにどんどんおかしくなってきて、思わず一人で笑ってしまいました。

が。こういうことを言っても罪がない人っていうのは、かなり良いセンスをもった真性天然の人だけですので、良い子はマネしないように。それと、ちなみにですけど、女性の処世術(護身術?)として、男性をむやみにドキドキさせないようにする技術っていうのもあるんですっっ! と、一応、自分のために弁解しておきたいと思います……(笑)。




そんなわけですが、お腹を抱えて大爆笑してしまうというよりも、クスクスと思い出し笑いをしてしまうような、そんな良質なコメディ映画を見てきました。それが、『喜劇 競馬必勝法 一発勝負』。ちなみに、見に行った映画館は、先日もちょっと触れました浅草名画座こちら)。今回は、土曜日だったということもあるのか、物凄い混雑ぶり。普通に子どもづれのお客さんまでいて、とってもイイ感じでした! 上映中にタバコ吸ってる人も、一人しかいませんでした! (って、やっぱり一人はいるのだね。)




コメディ映画は、出演者がとにかく大切です。天然で笑えるのはともかく、故意に人を笑わせるのって、とても難しいもの。どんなに面白いシナリオがあっても、その面白さを活かせる芸がないと、満足がいくものにはなりにくいのではないでしょうか。(だから、今の日本には面白いコメディ映画が少ないのかも……)

その点、本作の出演者は、スゴイです。クレイジーキャッツの元メンバー・谷啓(「ガチョ〜ン」の人ね)と、伴淳三郎(「アジャパー」の人ね)。この谷啓と伴淳のコンビが、とにかく最高に面白くて。丸々とした谷啓と、ヒョロヒョロした伴淳。熱くて一生懸命な谷啓と、飄々としてオトボケな伴淳。お笑いコンビの組み合わせとしては、ピッタリ! 脇を固める出演者もゴージャスです。悪役顔がウレシイ東野英治郎(初代黄門様ね)、マジメになればなるほど笑える西村晃(2代目黄門様ね)、たこ八郎の師匠だった由利徹(「おしゃまんべ」の人ね)、そして笑うせぇるすまん似の大橋巨泉(「セミリタイア」の人ね)など、ツボをつかれまくりです。ね、面白そうでしょ?

そして、監督は、以前にも書いた『乾杯!ごきげん野郎』『喜劇 男の腕だめし』など(こちら)を撮った、コメディの名手瀬川昌治監督! 面白くないわけがないのです。




というわけで、ストーリーを紹介。主人公は、山形県のとある市営競馬場の所長、茂作(谷啓)。彼には、ある悩みがありました。それが、妻のマリ(橘ますみ)。人もうらやむほどキレイな奥さんですが、子作り攻撃がすさまじく、さらにマリの母と祖母からも子作りプレッシャーが。困った茂作は、競馬場専属の獣医、剣山(伴淳三郎)に相談。さっそく馬用の聴診器で、馬スタイル(=四つん這い)で診察され、馬の“何か”でできた強壮剤を渡されて、馬並みの精力をテンポラリーに手に入れる日々なのでした……。

一方、茂作が所長をつとめる競馬場は、売り上げが伸び悩み気味。茂作は、そんな競馬場を盛り上げるため、名馬をそろえたレースを構想していました。そんなとき、人気TV番組『11PM』の司会者である大橋巨泉が、競馬場を視察しに来ることに! かくして、ハーフの美人秘書をひきつれて現れた巨泉、「秘書をつれて避暑がてら、ということで。ウッシッシ」などとトバしまくり。そんな巨泉の「300万円で名馬を譲る」という良い話に、チャンスとばかりに飛びつく茂作。が、巨泉歓迎の宴のさなかにTVをつけると、『11PM』が。これはビデオ録画だと言う巨泉ですが、奥の部屋では、マリの祖母がキャーキャー言いながら視聴者クイズに電話中継で回答中……。さて、どうなることやら?!




笑える面白シーンに満ちた作品でしたが、ケッサクだったのが、「てめえらが八百長試合をやったせいで負けちゃったじゃねーか!」と言って谷啓に襲いかかってきたチンピラ役の西村晃(2代目黄門様)。谷啓を誤って殺してしまったと勘違いし、気絶した谷を馬小屋に運びこみますが、そこに競馬場のスタッフが登場(その一人が小林稔侍)。あわてた西村は、気絶している谷にタバコをくわえさせ、あやつり人形のように背後から谷を動かすさまが本当におかしくて。思い出し笑い必至。


そして、女子的に一番の見どころと言えるのは、茂作の妻マリとその母(赤木春恵)と祖母(飯田蝶子)、この女三代の直球ガールズ・トーク! とにかく子作りに励め、と娘マリをさとす母と祖母。娘に向かって、「おめぇ、一日何回可愛がってもらってるんだ?」と問う、ぶっちゃけすぎる母。娘も娘で、「一日おきだね」と素直に即答。「たった二日に一回か!!」と仰天するファンタジックな母。さらに続けて、「私のときは朝晩のおつとめは絶対だったのに」と暴走する母のみならず、「わしなんていつでもどこでも田んぼでも畑でも後ろから、振り向いたら隣のナントカさんだったこともある」とかぶせるアナーキーな祖母。……こんな女三代の素敵すぎるガールズ・トーク、なかなかお目にかかれるものではありません。現実にはもちろん、映画でも、ね。

っていうか、そいつらガールじゃないだろう、って? いやいや、ここで言うガールとは年齢じゃないのですよ。この自分の半径10メートル以内が全世界だと言わんばかりに自分の思いを素直に言葉に変換して、さらにぐいぐいエスカレートしていくさまが、非常に女子的だなと。男性だって、心は少年のまま、って言いますが、女性だって、年をとっても心は女子のまま、なんです。特にエネルギッシュな人であればあるほど、心は女子のまま。そういう魂レベルでのガール、という意味で。私も20代のときは、大人になるにつれて全く違う人間になるんだと思ってましたが、そうじゃないんですよねぇ。むしろ、自分の女子としてのコアな部分が、より鮮明になっていくというか。認めざるを得なくなってくるというか。つまり、自分で自分に観念せざるを得なくなるのが、大人になるということなのかも。

そういえば先日、「今度30代の女の子だけで飲むんだー」と言ったら、知人(男性)が、「それって……ハゲで長髪のヤツらと飲む、って言うのと同じくらい矛盾しているのでは……」なんて言うじゃないですか(笑)! 「ひどーい! 長髪だけどテッペンがハゲてる人だっているもん! 実際、昔の上司にそういう人いたもん!」と反論したら(どんな反論だって笑)、「だから……“そういう存在”だってことでは……」ですって! このたとえ話がかなりツボで、ムッとする以前に爆笑してしまい、今でもついつい思い出し笑いをしてしまう私なのでした。でもでも。長髪だけど薄毛な存在、結構じゃないですか! 矛盾した状態、大好き! 矛盾した人間、LOVE! 矛盾した状態にあってもクスクス笑っていられるような、そんな堂々と矛盾を楽しめる大人の女(心は女子)でありたいものです。矛盾を楽しめるのも、矛盾している存在である自分を認めちゃった大人だからこそ、できること。コドモは矛盾に耐えられませんからね!



と、話は脱線しましたが。そうそう、この素敵にアナーキーな祖母(飯田蝶子)が、茂作(谷啓)に向かって、こんなことを言っていました。

おめぇ、可愛がるとき何て呼ぶんだ? それで男の愛情がわかるんだべ

ですって! みなさん(笑)!
で、それに対する谷啓の回答は、以下。


メロンちゃん……







◆wikiで見つけた、本作の出演者たちのトリビア

・西村晃の父親は、日本初のロボット「學天則」作った西村真琴。映画『帝都物語』では、その父親の役を担当。
・伴淳三郎は、浅草サンバカーニバルの発案者(と言われている)。
・大橋巨泉は、テレビ東京で競馬実況をしていた小倉智昭を引き抜き、自分の事務所に入れた。

 
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