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【映画】 『乾杯!ごきげん野郎』

2007.01.18 Thursday

新年早々、坂道で転んでしまいました。雨に濡れた下り坂にて。白線の上って濡れているとすべるんですね。しかもはいていたパンプスのヒールがすり減っていて。後ろに倒れそうになって、咄嗟にバランスを取ろうとしたら逆に前のめりになり、思いっきり前方1メートルほどまでザザーッとスベリました。買ってまもないパンツの膝に穴があき、膝には何やら白いものが露出。すぐ瘡蓋(かさぶた)になるかと思いきや、いつまでも白いものがウジウジしてるので「あら〜?」と思って病院に行ったら、表面の皮膚が完全に飛んでしまっているので、皮膚が再生するのに1ヶ月くらいかかるとのこと。病院の先生いわく「切り傷だと皆さんすぐに病院に来るけど、かすり傷ってあまり来ないんですよね。でもこれは病院に来ていただたかないと駄目ですよ」と。(左の画像は関係ありません)

一張羅ぎみだったパンツ(ズボンね)を駄目にし、痛む膝をひきずり、新年早々ションボリだった私。ションボリを克服するための特効薬は、私の場合、本を読むか映画を見るかに限る! だなんて、なんとまぁお手軽でお安い特効薬でしょうか(笑)。でも、この特効薬のウィークポイントは、「つまらない映画もしくは本だった場合、さらに良いものを摂取しないとさらに収まらなくなるため、時間がかかる可能性もある」ということです。もっと良いものをもっと面白いものをもっと刺激的なものを……とまぁ欲望はとめどなく……。でもそうやって欲望のままに映画や本をむさぼってるうちに、ションボリなど吹き飛んでしまうのですけども。(右の画像は関係ありません)



というわけで、先日、京橋のフィルムセンターの「歌謡・ミュージカル映画名作選」特集に行き、『乾杯!ごきげん野郎』を見てまいりました。


『乾杯!ごきげん野郎』
(1961年 ニュー東映東京)
監督:瀬川昌治
脚本:井手雅人
音楽:松井八郎
出演:梅宮辰夫、南廣、今井俊二、世志凡太、東野英治郎、高橋とよ
三田佳子、山中みゆき、八代万智子、榎本健一


内容は、九州の養鶏場で働く4人の青年が、コーラスグループで一旗上げようと東京にやって来るドリーム・カム・トゥルー物語。

その九州コーラスグループのメンバーは、まだ漬物を漬けていなかった頃の梅宮辰夫(上の写真の右から2番目)や、後に浅香光代とご結婚される世志凡太(せしぼんた)(上の写真の一番左)などが扮しています。

そして東京に出てきた彼らは、ジャズコンテストに出場することに。このコンテストのゲストとして登場するのが、人気美人シンガーの明石まゆみ。彼女に扮したのが、現在と全く顔が変わっていないという驚異の女優、三田佳子(当時20歳)。ホントに今と変わらない顔でビックリというか、今の彼女が過去の彼女と同じでビックリというべきなのか。エリザベート・バートリか楳図かずおの『洗礼』か、40数年の時を越えて保存され続ける美貌とは?! ……という映画ではありません(笑)。えーと、三田佳子の着ていた、帽子のフチとワンピースの衿に豹柄フェイクファーのついたセットが物凄くオシャレでした。それから、豹柄のワンピースを着せられた女装のミサイル川田こと、大泉滉の怪演が笑えました。

そんなわけで、九州男児たちは何とかして自分たちの歌を売り込もうと、あれやこれやと策を弄します。そのうち彼らは、ある芸能プロダクションの会長の米寿を祝うパーティに忍び込むことに。そしてまんまと、補聴器をつけたヨボヨボの会長を拉致するのですが……。


この補聴器をつけた芸能プロダクションの会長を演じたのが、往年の喜劇王エノケンこと、榎本健一(えのもとけんいち)。エノケンって、ものの本を読むと必ず出てくる名前ですよね。もちろん私はリアルタイムで彼の芸を見たことがあるわけがなく、十代の頃に親と一緒に『虎の尾を踏む男達』(黒沢明監督)を見たことがあるくらいで、今ひとつピンと来ていませんでした。ところが。この『乾杯!ごきげん野郎』に出てきた彼、ほんのちょっとの登場なんですけど、凄い。ここだけ早回ししてる?っていうくらい、スピード感のあるパフォーマンス。4人の青年たちが次々にエノケンの口に食べ物を突っ込み、それをパクパクと物凄い勢いで食べながらも同時に葉巻を吸う、その時の困ったようでもあり満足気でもあるかのような可笑しな表情と言ったら! (このシーンの撮影時のエピソードは、瀬川昌治氏の最新著書『乾杯!ごきげん映画人生』(清流出版)に詳しいです) やはり、芸ってこういうものなのだなぁと思いました。昨今の、笑うポイントがよくわからない学芸会コントを披露するだけで「お笑い芸人」と堂々と称している方々に、この映画を見せたい気がしました。ま、「“お笑い芸人"という表看板の単なるタレント」っていうジャンルもあるとは思いますけどね。

最後にはちょっぴりホロリとするシーンもあって、セオリーどおりの「笑いあり涙あり」の良質なコメディ映画でした。おまけに、デューク・エイセスが吹き替えをしたというテーマ曲(松井八郎作曲)も、とてもハッピー。「幸せは誰でもみんな欲しいもの だけどお金じゃつかめない♪」というある意味ベタな歌詞ですが、ハッピーなメロディに乗って、渋い男性コーラスによって歌われると、「そうそう、幸せってお金じゃ買えないのよね。まぁある程度まではお金で買えることは確かだけど、でも本当の心の充足は自分でつかむしかないのよね」なんて思ったりして。



それにしてもこの映画、やっと見ることができて良かった。だって、瀬川昌治監督だから! 実は、去年見た映画のなかで一番面白かったのが、瀬川昌治監督の映画だったのです。去年、ラピュタ阿佐ヶ谷でやっていた「瀬川昌治の乾杯ごきげん映画術」という特集で、『喜劇 男の腕だめし』(1974年 松竹)という映画を見たのですが、これがもう傑作中の傑作だったんです。フランキー堺も太地喜和子も石橋蓮司も、芸人根性にあふれてキラキラしていて、演出もストーリーも爽快で粋で。こんなに面白いコメディ映画が日本にあったなんて! と、衝撃を受けました。思いもよらないところで素晴らしいものを発見するのって、本当に嬉しいものですよね。例えば、全然期待しないで生活費を稼ぐためだけに入った職場で、凄いイイ男がいるのを発見しちゃった時のような……(どういうたとえ話だ笑)。

この映画(『喜劇 男の腕だめし』)、ビデオにもDVDにもなっていないのが非常に悔しい、というか「なんで?」という感じです。純粋に不思議。でも、いわゆるインテリの方々って、おふざけやお笑いよりも真面目で深刻なもののほうが「上」だと思ってることも多いみたいだから、仕方が無いのかな。でも良くも悪くもお笑いブーム花盛りの現在、お笑い=「下」なんていう古くさい価値観は、最近のインテリの間でも時代遅れのものになっていると思いたいものです。そういえば昔、良質のコメディが好きだと語る私にむかって、「私、コメディってキライだから」と五月蝿そうにおっしゃった超インテリエリート嬢もいらっしゃいました。お元気ですか?(って絶対にこのブログは見ていない笑)。


というわけで、今年も良質のコメディ映画に出会えますように! そして、早く膝の皮膚が再生しますように〜。


 
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