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【着物】 しつこく、着物のルールについて。 〜もしくは、美学をもっている人にあこがれること。

2009.06.02 Tuesday

6月になりましたね。キモノのルールでは、「単衣(ひとえ)」の季節の到来! と言っても私、5月でも暑い日は単衣着てましたが。しかもそれで歌舞伎座に行きました……(そのときのキモノ詳細についてはこちら)。しかも紬で……。以前、「歌舞伎座には、訪問着や付け下げ、崩しても小紋くらいの格のキモノで行きましょう。紬などは避けて」という記述をどこかで拝見しましたが、それ書いた方って歌舞伎座にあんまり行ったことないんじゃないかと思ったりしました。紬にもいろいろありますし、別に桟敷席に座るわけでもないんだから紬でもいいんですよ……。

でも未だに、「ルールはちゃんと守っていただきたい」「決まりを守ってこそ日本の伝統美というものです」的なご意見を耳にすることがあって、いろいろ考えさせられる日々です。

そこで気づいたのは、人間には2つのタイプある、ということです。ひとつは「ルールや決まりが生理的に好きな人間」と、もうひとつは「ルールや決まりが生理的に苦手な人間」。さらに、これらは以下のように言い換えられるかもしれません。ひとつは「自分の頭でモノゴトを考えるのが生理的に苦手な人間」と、もうひとつは「自分の頭でモノゴトを考えるのが生理的に好きな人間」。まぁ、どちらも一長一短だとは思いますので(笑)、どちらが良い悪いという話ではありません。念のため。



ところで、私が愛読している荒井修さんのブログに、キモノのルールについてのステキな記事がありました(こちら)。

あ、荒井修さんとは、浅草にある老舗・文扇堂の4代目のご主人。文扇堂とは、中村勘三郎さんや坂東玉三郎さんなど、歌舞伎役者御用達の扇の店としても有名です。そんなご主人なので、キモノのことは詳しすぎるくらい詳しい方。そんな江戸っ子なご主人のキモノのルールについてのご意見、ちょっと長いですが引用させていただきます。

だいぶ暑くなってきた。

それでも呉服の世界ではまだ袷の季節である。

6月1日から6月末までが単(ひとえ)、 7月1日から8月末までが薄物、 9月1日から9月10日までが単、それから9月末までが袷、そして10月1日から3月末までが綿入れと言われている。

多少違う説もあるが、とにもかくにもそんな掟があるのである。


僕は子供の頃から着物を一人で着ていたほどだから、そんな掟があることはずっと聞かされて来ているのである。

そして大学2年の頃には元日に今年1年間洋服は着ないと決め、寒い雪の日も、真夏の太陽がぎらぎらしている日も着物で過ごしたのである。

そしてその結果、僕はこの掟を無視することにした

なぜなら着物は楽しむもの、だらだら汗を流しながら着たって着物がシミになるだけだし、第一お洒落じゃない。

特に江戸っ子は先取りを自慢したものだ。だから高くついても誰より早く初鰹をたべたのだ。

俗にいう着物研究家のような人は、「そういうケジメがあるから着物には美学があると言う。

それはそれで解らないではないが、僕は人より着物を着る機会が多いと思うので、常に気持ち良く、さっぱり着ていたいのである。

それも僕の美学なのだ

だから着付け教室のような着方ではなく、帯の下に紐は使わない。日常的に楽に着る事こそが着物に親しむ事だと思っている

よく1月でもチョット暖かいと思うと外人がTシャツで歩いていたりするが、着物もそれで良いと思っている。
全記事はこちら



そうそうそう! と、頷きっぱなしでした。カッコイイ!

……なんてことを言うと、「そうは言ってもそれは浅草の老舗のご主人だから許されることでしょう。そこらへんの庶民がやったってみっともないだけ。上級者と初心者は違う」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことないのですよ。もちろん、今すぐ老舗のご主人のようにカッコよくはいかないかもしれませんが、そんなの当たり前じゃないですか(笑)。そんなことよりも、ステキな人や、自分の美学をもっている人を見つけたら、「ちゃんと、しっかり、あこがれること」。これって、絶対大事だと思うのです。だって最初から自分とあの人は違うって言ってサジ投げちゃったら、一生そのままですものね(一生そのもままでいいならそれはそれでアリだと思いますが)。



というわけで、荒井修さん、ひそかにあこがれてます。新橋芸者さんが開催する「東(あづま)をどり」を見たあと新橋演舞場前の喫茶店で祇園の芸妓とお茶屋の女将さんと待ち合わせした(こちら)とか、七之助の弁天小僧のときに隈取をもらった(こちら)とか、もってる帯の90%は浅草の「帯源」のものだ(こちら)とか、洋服ではワルな着こなしとか言ってるのにキモノになると着物と帯のセットみたいのしか着てなくてつまんない(同感!!!)(こちら)とか、歌舞伎役者の家へ出入りするための控半纏の話(こちら)とか、歯切れよく、嫌味なく、サラッと書かれています。勉強になるだけでなく、文章がとても面白いのです。ぜひ読んでみてくださいね。



■関連記事。

「ほぼ日刊イトイ新聞」での文扇堂4代目店主・荒井修さんへのインタビューは、こちら

webマガジン「マカロニアンモナイト」での、「扇子職人・荒井修氏に聞く下町浅草・江戸の心意気

 
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