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【本】 祖父江慎さん&真珠子ちゃんの特別講義。

2009.03.15 Sunday

特に何かの宗教を信じていなくても、いや、逆にそれだからこそ、心のなかに「神様的な存在」を抱えているものではないでしょうか? 私なんか、のめり込みやすいし、思い込み激しいし、気も多いので(笑)、そんな「神様的な存在」が心のなかにたくさんいます。そんな神様的の存在のお一人に、ついにお会いすることができました! そう、天才ブックデザイナー・祖父江慎さん!

先日、お友達のイラストレーター・アーティストの真珠子ちゃんと祖父江慎さんが、東京デザイン専門学校で特別対談講義をおこなうというので、こっそりお邪魔させていただいたのです! 東京デザイン専門学校の講師であるイラストレーターの千葉照紗さんの司会のもと、祖父江さんと真珠子ちゃんとの、キラキラ☆ウットリトークが繰り広げられました。



祖父江慎さんと言えば、'90年の『伝染るんです。』(吉田戦車)のアヴァンギャルドなデザインが有名ですよね? あの本をデザインするに際しては、「物凄く不器用な素人デザイナーが頑張ってつくった」というトンデモない設定をし、わざと誤植をして乱丁本に見えるようにしたんだとか。私も『伝染るんです。』は「スピリッツ」連載時から大好きだったので、単行本が出たとき即買ったんですが、「アレ? この本、間違ってる??」って思いました(笑)。

そうそう、私が祖父江慎さんの大ファンになったのは、7、8年前に、『悪趣味百科』という本を手に入れてから。だって、工藤静香も引くに違いないほどクドいヒョウ柄の表紙もさることながら、本文全ページ「う」と「ん」と「こ」の文字が太字なんです……。スゴイですよねぇ。内容はアメリカ大衆文化についてのマジメな研究本なのに(笑)。日本にもこんなスゴイことをする人がいるんだ! と、感動と笑いに身を震わせつつ、「装幀:祖父江慎」という文字を心に刻み込んだのでした。

ちなみに、この『悪趣味百科』は、菊地成孔氏の初著書『スペインの宇宙食』でご本人が愛読している旨、書かれていました(あ、別に私はナルファンではありません。でも、この『スペインの宇宙食』は昔、友人に唐突に渡されて読みましたが、「エレガンスとインテリジェンスに憧れる妄想癖のある真面目で偏執狂的な人物のエッセイ」として、ちょっと人ごととは思えず笑、とっても面白かったです。もちろん誉めてます)。



で、祖父江さん&真珠子ちゃんの対談についてです。もともと祖父江さんが真珠子ちゃんの絵を見て「スゴイ人が出てきたなぁ」と大好きになり(→真珠子ちゃんの活躍についてはこちら)、「ぜひ一緒にお仕事したい!」とずっと思っていたんだそう。それで、香山リカさんの『ポケットは80年代がいっぱい』のデザインをするときに、真珠子ちゃんにイラストを依頼したのが始まりで、橋口いくよさんの『原宿ガール』もお二人で手がけたのだそうです。





とにかく、祖父江さんは真珠子ちゃんの才能にメロメロのご様子。お二人のフシギな浮遊感と、半歩…というか時には数歩も後ノリの緊張感あふれるタイミングなどがピッタリで、「この二人は同じ星からやって来たに違いない!」と思わされました。

何しろ、祖父江さんってば、トーク中にマイク分解しちゃったり、真珠子ちゃんの問いかけにマイクのネジをキコキコ鳴らす音でお返事したり、イキナリ「シェー」ポーズしたり(→たぶん生徒さんたちはイヤミの「シェー」は知らないと思われるのですが笑)、唐突にアグネス・チャンになりきって喋ったり(→たぶん生徒さんたちはアグネス・チャンもあまり知らないと思われ、みなさんポカンとしてましたが笑)、「三日徹夜すると色がね、生き物みたいに動き出すんですよぉ〜〜! こわいよねぇ〜〜」とお話したり、真珠子ちゃんが自ら絵を描いたピンクのネクタイを祖父江さんにプレゼントすると、「実は、ネクタイの結び方知らないんですよぉ〜(笑)」だったり、ホントに笑いの絶えない楽しい対談でした。




なんて、笑ってばかりではなく、祖父江さんからとってもいい言葉をたくさんお聞きしました! たとえば、
「ヤングな男子が陥りがちなんだけど、絵を描かなきゃ〜〜っていって、ムリして描くとダメです。描きたい〜〜っていう思いが高まったときに一気に描くと、のびのびしたいい絵が生まれます。そのためには、絵を描く以外のことが大事です。ドキドキすること、ウットリすることが、とっても大事。10ウットリして、1描く、といいですよ。ウットリすると誰かに何かを伝えたくなるから、それを貯めて貯めて、一気に出す! そうするといい絵が描けますよ」

10ウットリして、1描く!!!!
これを聞いただけで、行ったかいがあったというものです。イラストレーター志望の生徒さんの授業だったので、絵の話になってますけど、これ、絵だけじゃないと思うんです。たぶん、何でも、同じ。

それから、
「これもヤングな男子が陥りがちなんだけど、1枚の絵を完璧につくることを目ざすと、つまらない絵になっちゃいがちです。描きかけとか中途半端な感じが面白かったりするし、別の空間につながるような空間の可能性が残っていたほうが面白い絵になることも多いので、完璧を目指そうとしないで、のびのびと書くといいです」

とも仰っていました。これも、何事にも言えることですよね。完璧にしようと力めば力むほど、何かズレていって何かが死んでいって、アレ、こんなはずじゃなかったのに……って。これ、文章もそうだし、人生もそうだなーと。若い頃は全てが完璧じゃないと気がすまなくて、バカみたいに空回りして……って、よく考えたら、今でもそういうところがある青い自分にちょっと反省。



ちなみに、ついでに紹介したいのが、『グラフィック・デザイナーの仕事』という本。これは同じく祖父江さんファンのイラストレーター・コダカナナホさんに薦められたのですが、祖父江慎さんのインタビューが本当に心に響くものばかりで。思わず泣いてしまいました、私……。少し引用してみます。



なんとなく違和感があるというのは、そこにエネルギーのある証拠なので、どこがイヤなのかをよ〜く味わってみれば、イヤだと思っていたところが実は魅力で、そこが人気の秘密だった、ってこともあります。たとえば「下品でイヤだな」と感じても、そこで拒否しないで「下品ってすばらしいのかも」って頭を切り替えて、もう一度味わってみる。(中略)違和感はエネルギーであって生命力でもあるんで、愛につながりやすいんです。

眼力と経験、それとちょっとの愛があれば大丈夫よ(笑)。ふだんから「ゆとりのある生活を送ること」ですね。切迫した状態では、何も見えなくなります。そうしてつねづね「いいよな」と思うこと。気持ちを閉ざさず、開いていること。自分だけの価値観ってやつに惑わされないこと。人にも現象にも、ご挨拶をちゃんとすること。自分でないもののなかにも自分を置いてみること、です。(中略)いろんなところを見て、ウットリすればいいんですよ。

細かいところをキチンと決めていくのは、実はあいまいさを演出するためのものなんです。よりストレートなあいまいさの効果を高めるためには、キチンとしたところを本当にキチンとしておく。(中略)「表現しにくいんだけど、伝えたいこと」は、決まりや理屈からこぼれていってしまうので、こぼれていってしまうものを少しでも伝えるためにも、キチンとした細かい設定が必要なんです。キチンとしたルールが大切なのではないんですよ。

だいたい最初のプランは通らないです。すぐそのまま通ることって、まずないですね。やり直すときは、最初のプランをすっかり諦めることですね。前のプランに未練が残ったまま次のプランを立てると半端なデザインになっていくから、サッパリと。フラれたら追っかけないこと!(笑)

「誰が見ても大丈夫」な構成っていうのは、あまりに中庸になってしまい、つまらなくてダメですね。

いろいろなステキに接触したり、ドキドキウットリできたことがいちばんよかったと思います。コミュニケーションって、いいですよねぇ(笑)。


などなど、名言がホントにいっぱいありすぎるので、ぜひぜひ読んでみてください!



そんなわけで、お二人の貴重なお話を聞くことができて、本当に、楽しかったです。それこそもう、ただただウットリ、でした。そう、私だって心置きなくウットリしていいんだった! というか、もっとウットリしなきゃ! もっともっとたくさんウットリして生きていこう! そんな勇気をもらった一日でした。生きててよかったです。





◆おまけ。
かの菊地成孔氏も愛読しているという、幻の名著『悪趣味百科』(現在絶版)の祖父江さんデザインがいかに素晴らしいか! ちょっとだけお見せいたしますね。




ショッキングピンク地に、得体の知れない小鳥?柄。




キミドリ地に水玉、トレーシングペーパー。


このトレーシングペーパーをよく見ると……、




毛入り、です!!!!


何の毛かは分かりません……。



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