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【映画】 『観賞用男性』  〜日本のお洒落なロマンティックコメディ! または、徹子の部屋。

2008.11.06 Thursday

昨日、何気なくTVをつけていたら、『徹子の部屋』のゲストが往年の大女優有馬稲子さんで。イネ子さんってば、あのゴージャスな美貌にも関わらず、テツ子に負けず劣らずの超早口! 両者がマッハ並みのスピードで「同時に」しゃべりまくる様子は、かなりスリリングで、思わずTVに釘付けに……。

現在76歳で独身のイネ子さんは、400人以上が暮らす横浜のライフ・ケア・マンションにお住まいだそうで、そこでの楽しい暮らしぶりについてお話されていました。仲間との楽しい共同生活を送るイネ子さんですが、「でもホントは、私、“旅に病んで 夢は枯れ野を 駆けめぐる”って言いますけど、最後には旅先でポカンと死にたい、って思うんです」と、松尾芭蕉の辞世の句を引用しながら、心の奥底をしみじみと吐露……したのに、超早口で「まーねーみなさんそう言いますけどねーなかなかねー!」と速攻言い放つテツ子(笑)。

番組の後半、イネ子さんが、そんなわけでお一人様の老後生活を楽しんでます風にしめくくろうとした最後の最後で、「でもアナタ、(イネ子さんはイギリスがお好きなのをふまえて)たとえばイギリスとか行って、ステキな男の人がいたらそこに居ついちゃうっていうのはどーおー?」と混ぜっ返し、それを受けたイネ子さん、乙女のようにはしゃぎながら「でもね〜、私ね、英語ができないのよ〜〜!!」と答えると、テツ子キャラキャラ笑いながら「でもイギリスも広いから、日本語ができるイギリス人もいるかもしれないじゃない〜!!!」……で、番組終了。

何なのこの女子ノリは(笑)! あーもーテツ子、最高!! 最後の最後でイネ子さんの可愛さを引き出したテツ子、さすが!! イネ子&テツ子のゴージャス70歳代女子トーク。何だか年をとるのが怖くなくなりました。




なんて、そんな『徹子の部屋』のトークを見てしみじみとしたのも、先月、神保町シアターで有馬稲子主演の『観賞用男性』(1960年 松竹)というロマンティックなコメディ映画を見たばかりだったから。

しかも、監督は野村芳太郎。VTR&DVD世代には、「松本清張ものと言ったら、野村芳太郎」という『砂の器』なイメージが強いかと思われますが、松竹で良質なコメディもたくさん作っていました(何しろ、山田洋次や森崎東などが野村監督の門下だったくらいですから!)。なのに、彼が手がけたコメディ作品があまりソフト化されていないため、野村監督と言えば『砂の器』『八つ墓村』なイメージが固まってしまっている様子。とても残念です。っていうか、『砂の器』と『八つ墓村』がいろんな意味で強烈すぎた、っていうのもあるのかもしれませんけど……(ほとんどトラウマの域)。



そんな『砂の器』と『八つ墓村』の監督が1960年に作った作品、『観賞用男性』は、とってもオシャレでロマンティックな映画。昔の日本にもこんな洒落たロマンティック・コメディがあったんだ!! って、嬉しくなっちゃうくらい。たとえるなら、オードリー・ヘプバーン×フレッド・アステアの『パリの恋人』とか、シャーリー・マクレーン×ジャック・レモンの『あなただけ今晩は』みたいな感じ!(褒めすぎ?)

ロマンティック・コメディの欠かせない条件として、
1. 主演する男女がとにかく魅力的(必ずしも美形である必要はない)。
2. 衣装やセットなどがとびっきりオシャレ。
3. 仲違い・すれ違い・誤解を経て、ハッピーエンド!

だと私は勝手に思っているのですが、まさに『鑑賞用男性』はそれに当てはまるのです。というわけで、それぞれを以下に解説。

■主演する男女がとにかく魅力的。
当時28歳の有馬稲子は、どこからどう見ても、本当に可愛くてキレイで美しい。で、肝心の稲子さんの相手役が、杉浦直樹ですよ! キャー。ある世代の方々には、発毛関係・育毛関係の宣伝でおなじみらしいんですが、私にとってはもう何はともあれ、『二匹の牝犬』です!! ……って、「何それ?」って感じかもしれませんが、『二匹の牝犬』(1964年 東映 渡辺祐介監督)は、知る人ぞ知る超超傑作映画(未ソフト化。もう一度見たい映画ナンバー1!)。ある姉妹(小川真由美!と緑魔子!)がそれぞれトルコ嬢と売春で荒稼ぎ(ってまたスゴイ設定ですけど)、証券会社につとめるボケーっとした男(杉浦直樹)を取り合うんですが、ここでの杉浦直樹のサイアクでサイテーなダメ男っぷりに、私、思いっきりやられてしまったんです! あんなにヒドイ男、映画でも見たことないよ、ってくらいヒドイ。ホント、サイテー。なのに、ハートを奪われてしまったんですよ〜〜。

ダメ男とは縁がない私なのに(ホントか笑?)、『二匹の牝犬』を見て以降、「私、だめんずの素質あるかも……」と自己認識の変更を余儀なくされました。『二匹の牝犬』以前と、『二匹の牝犬』以後。私は変わってしまったのです(マジで?) そんなわけで、私にとってはちょっと特別なヒト。杉浦直樹。ああ、あの育毛剤の……とか、私、知りませんから情報はいりません。

■衣装やセットなどがとびっきりオシャレ。
有馬稲子が演じるヒロインは、パリ帰りの新進気鋭のファッションデザイナーという設定。ということで、衣装が本当にステキ! 私が「コレはマネしたい!」と思ったのは、背中が大きくVの字にあいたドレスに、大きな青いラインストーンが一粒ついたネックレスをしているんですが、そのネックレスのラインストーンを後ろに垂らしていたこと! 前はごくシンプル。後ろはセクシー。私、Vネックのセーターは後ろ前に着るのを常としていますが(もちろん、ゴダール映画でのアンナ・カリーナの影響)、さすがにネックレスを後ろ前にしたことはありませんでした。これ、やってみたいです!

さらに、ファッション・ショウのシーンも沢山あって、当時のトップモデルたちが続々出演。ロシア貴族の血が4分の1入っている入江美樹(現・小澤征爾の妻)、元祖パリコレ・モデルの松田和子(後にパリ移住)、後にTVの司会などで有名になった芳村真理など。一番ステキだったドレスは、黒のコルセット風のキャミソールに、素朴な赤×白のギンガムチェックのスカートが裾を長〜くひいているドレス。素朴で田舎っぽいギンガムチェックと、洗練された豪奢なドレス、というミスマッチな組み合わせ! 今年の東京国際映画祭で、長澤まさみのギンガムチェックのドレスが話題になっていましたが、まさに現代にも通用するセンスでした。

そもそもこの映画は、当時ファッション・デザイナーとして著名だった中林洋子のエッセイが原案になっています。中林洋子は当時、有馬稲子の専属デザイナーでもありました。中林洋子について私は詳しくないのですが、海月書林さんが出している『いろは』4号で彼女について特集されているそうです。ブック・デザイナーとしても活躍し、三島由紀夫の『お嬢さん』とか、北原武夫の『体当り女性論』とか、中央公論社の「世界推理名作全集」「日本の文学」「世界の文学」「日本の名著」「世界の名著」などのシリーズなどの装丁を手がけています。そんなトップデザイナーだった中林洋子には、『貴女のためのアイディア』(1960年 絶版)という本があるんですけど、どんな内容なのか……かなり読んでみたい。

■仲違い・すれ違い・誤解を経て、ハッピーエンド!
ヒロインのリマ(有馬稲子)は、3年ぶりにパリから日本に帰国した、新進気鋭のファッションデザイナー。帰国するなり、リマは、日本の男たちがオシャレもせずジミな背広を着ていることに憤り、「世の男性の美化に尽力したい!」と「観賞用男性論」を唱え、「観賞用男性服」を発表。さらに、一族が経営する会社の男性社員たちに「観賞用男性服ユニフォーム」を着せることを決定します。ところが、若手社員のひとり、文二郎(杉浦直樹)だけはそれに猛反発。実は、文二郎は、リマの姉の夫の弟なのでした(つまり血のつながらない親戚)。

そんなわけで、「観賞用男性服ユニフォーム」をめぐって、リマと文二郎が対立するわけですよー。だいたい、このユニフォームっていうのが、タータンチェックのスカートにロングソックス、首にはロングストールなんていうトンデモないシロモノ。そんなユニフォームを着せられた男性社員たちは、恋人に逃げられ、妻に去られ。そんな中、文二郎ひとりが「オレは背広を着続ける!」「オレは断固戦うぞ!」「あれが美人か?! だいたいあんな才女ぶった女、鼻持ちならないんだよっ!」と息巻くわけです。んー、気骨のある男性って、ステキ!

ところが。文二郎ってば、社員のユニフォームの採寸のため会社を訪れていたリマにバッタリ遭遇し、「あら〜! ブンちゃん、久しぶり〜〜! こないだまでこ〜んなにちっちゃかったのにねぇ〜!!」と、キラッキラした笑顔を無邪気に向けられ、何も言えなくなって固まり、そのまま回れ右して逃げる。……ダメ過ぎ(トホホ)。

どっちかと言うとトホホなくせに強情っ張りな文二郎と、無邪気なゆえに情熱が空回りしがちなリマ。そんな2人が反発しあいながらも惹かれあい、結局はどのようにして結ばれるのか? ……ね、これこそロマンティック・コメディの王道ですよね! 2人とも目の前のことばかりに躍起になって、自分の奥底の気持ちに気が付かない。いやいや、薄々気が付いているんだけど、気付きたくない気持ちの方が強すぎるわけで。意外と人って、無意識のうちに自分の気持ちをコントロールしてしまうもの。無意識のうちに、「これはあり得ないから」「そっちはナシね」と、自分でコントロールしていると思うのです。驚くほど。

話は飛びますけど、昔働いていた職場で、非常にクセのある上司(女性)がいました。とにかく他人の悪口や非難が多くて、ヒステリックな気分屋さんで。根本的に悪い人かどうかっていうのは私が知るよしもないので分かりませんが、そんな負のエネルギーを受けているうちに精神的に消耗してしまい、結局その職場は辞めたんですけど。先日久しぶりにその人の話が出たのですが、私、名前を覚えていなかったんです。知人が「○○さん」と名前を出しても、「アレ……そんな名前だったっけ?」と、全然ピンと来ない。ビックリしました。忘れるはずもないのに。そこで気付いたのは、「その記憶はナシね」と、自分のなかでそのことを「ないこと」にしてたんだ、ということで。想像以上に、人って自分の気持ちをコントロールしているんだなぁ、と改めて悟った次第(ま、どーでもよかっただけかもですが)。

なんていうこととはちょっと違うかもしれませんけど、「自分の奥底の気持ちに気付きたくない」ことって、あります。たとえば、自分の奥底の気持ちと、自分が直面している状況が、どう考えてもそぐわない場合。そんなとき人は、状況のほうを優先させて、自分の気持ちのほうを「ないこと」にします。この映画では、「相手のことを本当は好き」という気持ちを無意識のうちに「ないこと」にしようとするわけですが、その逆に、「相手のことを本当は嫌い」という気持ちを「ないこと」にしようとすることもありますよね。何とかして、その人のいい面ばかり見ようとする、傷つくことを言われても悪意からではないんだと思おうとする、そんな経験、私も結構あります(その前述の職場にいたときがそうでした笑)。

そんなふうに自分の奥底の気持ちに気づかないよう、無意識下で「そっちはナシね」と自分の気持ちを必死にコントロールする。そんな状態って、結構っていうか、かなり、キツイ。短期間はいいけど、長期間はムリ。ある閾値を超えると、心がポキッと折れます。なので結局は、あまり自分をコントロールしようとしない方がいいのですね。でも、それって無意識にやってしまうことだから、或る程度はどうしようもないところもある。だけど、そんな自分にうっすら気が付き始めたら、素直にそれを認めてあげましょう。そして、なるべく早く、自分コントロールの呪縛を解いてあげましょう。……って、お前は心理カウンセラーか(笑)? エラソーによく言うよね〜(笑)。


そうそう、『観賞用男性』は、ロマンティック・コメディ映画。なのでリマ&文二郎の2人は、最終的には素直に自分コントロールの呪縛を解き、めでたくハッピーエンドとなるのでした! 素直になれて、よかったね♪ (……っていう感想しかもてない結末、っていうのがロマンティック・コメディのステキなところでもありトホホなところでも、ある




そんなわけで、『観賞用男性』は、3つの必須条件を備えた、ロマンティック・コメディの正統派。何故、ビデオにもDVDにもなっていないのか? 謎です。60年代、70年代には、オシャレな日本のコメディが沢山あるのに、ビデオにもDVDにもなっていないものが多過ぎるんですよね。日本のコメディって、寅さんシリーズのような「人情もの」は、「泣ける」というところに異様に価値を見出す国民性のためか、非常に尊ばれますけど(私も好きですけど)、こういうソフィスティケイテッドなコメディや、はたまた、瀬川昌治監督による太地喜和子三部作のようなセクシーなコメディや、フランキー堺とか伴淳三郎や三木のり平なんかのスラップスティックなコメディは、「人情もの」に比べるとB級扱いされているようで、本当に残念です。野村監督だって、こんなオシャレ・ロマンティック・ムーヴィーを作ってるのに、いつまでも『砂の器』とか『八つ墓村』ばかりじゃ浮かばれないですよね? いや、『砂の器』とか『八つ墓村』だから浮かばれないなんて言ってるわけじゃないですよ、いやいや、『砂の器』とか『八つ墓村』は嫌いじゃないですけどね、ええ、『砂の器』とか『八つ墓村』、もちろん嫌いじゃないです、「祟りじゃーー!」とか「知らない! 知らない!」とか、全然嫌いじゃないですから(つーか、相当好きだよね? お前こそ自分に素直になれよ、って話でした笑)。




◆『観賞用男性』(1960年 松竹)
監督:野村芳太郎
原案:中林洋子
脚本:水沼一郎
出演:有馬稲子、杉浦直樹、仲谷昇、芳村真理、
   細川ちか子、十朱久雄、上田吉二郎
   松田和子、入江美樹、河原日出子、木村洋子、高島三枝子
   桑野みゆき、渋谷天外、左卜全



◆オシャレ関連ドキュメンタリー映像上映情報!
 「短篇調査団」による、短編映画上映の会in御茶ノ水。
 今回はオシャレの巻。ということで、とても面白そうです!

11月12日(水) 20:00〜(上映時間100分)  
スペースneoにて

『くらしを衣裳で残す ―水島家の明治・大正・昭和―』
1989年/22分/カラー
制作:桜映画社/企画:水島衣裳雑貨資料研究室/監督:大島善助・原村政樹
脚本:大島善助・福間順子/撮影:村山和雄・木村光男/音楽:角田敦
ナレーション:杉田郁子
 六本木のマンションの一室にある、夥しい衣裳の数々。衣替え等の風習を厳格に守ってきた船場の商家の一人娘・水島千代さんの祖母の代からの衣裳と生活雑貨である。明治からの使った人の息づかいの伝わる服飾文化史。

『生活をひらく化学繊維』
1968年/28分/カラー
制作:日本映画新社/企画:日本化学繊維協会
プロデューサー:岡田弘/脚本・監督:大沼鉄郎/撮影:川村浩士
 現代の生活に欠くことのできない化学繊維は、単に衣服に使用されるばかりでなく、意外なところに、様々な形で使われ役立っている。肩のこらないコミカルなタッチで楽しくみせてくれる化学繊維百科。

『洗う ―洗濯の理論―』
1984年/20分/カラー
制作:岩波映画製作所/企画:ライオン家庭科学研究所
プロデューサー:陣内直行/脚本・監督:四宮鉄男/撮影:増川勇治
 私たちは毎日、沢山の衣服を洗っている。この洗うという日常的な仕事も、科学の目で探ると実に複雑なメカニズムをもっている。洗うことのメカニズムを解き明かす最新の理論と実験を通じて、洗濯の理論の知識と理解を深める。

『東京の衣生活 ―かっこいい男・洋服―』
1965年頃/30分/白黒/制作:NET/企画:東京都教育庁
 日本のモードの最先端をゆく東京に住む私達は、どのような衣生活をしていくか。自分をよく見出して適切な衣生活を考えよう。



 
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