BLOG

 

【日舞】 10/31「小唄in神楽坂」に踊りで出演いたします! もしくは、自分が自分で自分を楽しむ方法について。

2010.09.22 Wednesday

最近は忙しいというのを言い訳にtwitterばかりやってましたが、そろそろ毎日チェックするのが追いつかなくなってきた、初秋。今日も夏のように蒸し暑いですが、来週からは涼しくなるらしいですね(というセリフはもう何度も聞いた気がする)。

今年の夏はとにかく猛暑すぎた!というわけでこの数ヶ月、仕事以外では「冷房が効いてキンキンに冷えた部屋で本を読みまくる」しかしておりません。すべてのことは「涼しくなってからにしよう」の一言で解決。おそらく、10月くらいから私の夏が始まると思います。そのために体力と気力と経済力を温存(ある意味、冷蔵)していた、というワケ!

…なんてことをいくらでも思いつく自分の言い訳癖というか詭弁癖みたいなものの、滑稽さよ〜。でもそうやって自分の滑稽さをいち早く見つけて笑うことによって、実際たいして面白くもない現実を何とか面白がって生きていける、っていうこともあるんですよ〜。たぶん。これは自虐趣味とは全然別のことで、ある意味で、自分を客観視するって、それはそれで本人的にはエンターテイメントでもありうると思うんです。

えー意味わかんない、って思う人もいるかもしれませんけど、「他人を笑うよりは、自分を笑ったほうが、良心が傷つかなくて気持ち的にラクだし、自分がどれだけ自分を偽ったりミエ張ったり嘘ついたり誤魔化したりしてるかわかるとコメディ映画見てるみたいで笑えるし面白い」って感じる種類の人って、結構いるんですよね…。でもそういう視点で自分を笑うには、自分をさらに上から見るメタ視点が必要なので、たぶんお子様には無理です(と、エラソーに言ってみる)。

ただ、そうやって自分で自分を笑う面白がるという視点を持つのはいいけど、それを他人にも押し付けようとすると、それはそれで非常にうっとおしい人になるので(笑)、あくまでも「自分が自分で自分を楽しむための方法」と心得たほうがよき哉、とは思いましたー(自戒をこめて)。


なんてことはいいとして。さっそくですが、お知らせです〜!

10月31日(日)に、文筆家であり小唄師でもある宮澤やすみさん(著書はこちら)主催の、毎年恒例の人気イベント「小唄 in 神楽坂」に、今年も踊りで参加させていただくことになりました! 早いもので、踊りで参加するのは今年でなんと5年目! うわー。最初に参加した時って、若かったんだなぁ…なんて私以外にとってはどうでもいい話題ですすみません。皆さま、ぜひいらしてくださいね!


「小唄 in 神楽坂」 (神楽坂まち飛びフェスタ参加企画)

   日時 : 10/31(日)  14:30open 15:00start
   場所 : 神楽坂・毘沙門天(善国寺) 書院 
          (JR、地下鉄飯田橋駅B3出口 徒歩5分 MAP) 
   料金 : 前売2000円、当日2500円 
          前売券(webでも購入可)についてはこちら
   出演 : 扇和やす(=宮澤やすみ) (三味線、唄)、
         花柳なぎ嘉乃(=井嶋ナギ) (踊り)
   ■詳細は、こちらへ。



ちなみに、このイベントを主催している宮澤やすみさんが、BSで放送予定の「熱中スタジアム」に、仏像ナビゲーターとして出演されるそうですー! 奈良の有名なお寺や仏像などをわかりやすく紹介してくれるそうなのです。必見ですね♪
   ■放送予定: BS-2 10月15日 22:00〜、BS-Hi 10月14日 19:00〜
  




 

【日舞】ペニンシュラホテルで踊りました。もしくは、不況とか、『アバター』とか。

2010.01.23 Saturday

つい最近お正月だったとは。もう2010年も半ばにきたような気さえしませんか? 私だけかな。なんというか、不況不況って言われ続けると、なんとなく盛り下がってしまって、お正月も盛り上がりに欠けがち、っていうせいもあるのかも。

だけど、不況不況って言われていますけど、確かに、原稿料が下がったりしてますけど(笑)、わりとこの不況な状況は好きだったりします。だって、人ってラクなほうが好きだから、いき詰まった状態にならないと物事を真剣に考えないし、物事だって、困った状態に陥らないと誰も変えようとしない。でもそれじゃあラクだけど、なんか、つまんない。そう、物事には真剣に取り組みたいんですよね! 切実に。私のような真面目な人種には、実はありがたい世の中だな、と。……そんなひねくれた解釈でもいいでしょうか(笑)? 


根がネガティヴなこともあり、大人になってから「何事も良い方向に前向きに捉えよう」という癖を強制的かつ無理やり身につけてきたせいか、私はわりとこの不況の時代は嫌いではないのです。何しろ、未だにのらりくらりと暮らしている私を心配して親がいろいろと言ってきますが、そんな時だってすかさずこう言えばいいんですから↓

「今の時代はね、昔みたいな高度成長期やバブル時代と違うんだから大変なの!! インターネットという新しいメディアも登場しているし、世界的な不況だし、従来の考え方や従来の価値観でやってたらジリ貧になっちゃうかもしれないんだからー!!!」

と、とりあえずこう言っておけば、親も問題を深くつついてきはしません。今だからこそ効く免罪符的なセリフ、これくらいのメリット活用しなきゃやってられないですよねー!(?)




そんなことはいいとして、先日も書きましたが、日本舞踊グループ「和楽」に入ってから、今月は踊り踊り三昧の日々でした。こないだのエントリーで「イベントの様子はまた改めてブログにアップします、って書いてあったのにいっこうにアップされないじゃん!」と友人に言われたので、舞台の様子などをレポートしたいと思います。

先日の大晦日、2009年12月31日、ペニンシュラホテルでのカウントダウンパーティ。

まず「和楽」代表の姫乃さんが1人で『島の千歳』を踊り、次に姫乃さんと私で古典舞踊『東都獅子』、次に、涼さんと飛鳥さんと藤乃さんの3人で、和楽オリジナルの和楽歌舞伎舞踊『一閃』、というプログラム。



『東都獅子(とうとじし)』



左:姫乃さん(「和楽」代表)  右:なぎ


  



『東都獅子』は常磐津の名曲で、明治40年に新橋芸者さんによって踊られた曲だそうです。実はこの曲は3年前、私の師匠である花柳美嘉千代先生の主催するあやめ会で踊った曲でした(フリは全く違いますが)。

ちなみに、2人が手にもっているのは「扇獅子(おうぎじし)」。扇には牡丹の花がついていますが、「獅子と言えば牡丹、牡丹と言えば獅子」ということになっているので(なってるんです……)、この扇獅子は「獅子」だと見なさねばなりません。そう、「記号」です。記号。「茶髪でレイヤーの入ったキムタク風ロン毛=イケメン」ってことになってるのと同じように(なってないか…)。




『一閃(いっせん)』



左:涼さん 中央:飛鳥さん 右:藤乃さん



『一閃』は、「和楽」のために和太鼓奏者の石塚由有さんが作曲した、オリジナル曲。日本舞踊とダンスをアレンジしたスピード感のある踊りと、情熱的な和太鼓のコラボレーション。とにかくカッコイイので、動画をぜひご覧になってみてください!!

『一閃』動画は、こちらです!




カウントダウン→ハッピーニューイヤー! 



この日はガラパーティで、同じ日に出演していたジャズシンガーの方の歌に合わせて、シャンパンで乾杯。 





楽屋にて。

和楽」のメンバーと、和太鼓奏者の皆さんで。



後列左より、「和楽」メンバー、飛鳥さん、藤乃さん、なぎ、涼さん、姫乃さん。
前列は、石塚有由さん。


無事終わってホッとしておちゃらけポーズをとる、涼さん(=私の尊敬する師匠花柳美嘉千代先生)と私。








というわけで、「和楽」での初舞台、無事に終わってよかったです! 実は、当初は私はこの舞台に出る予定ではなかったのです。が、10日前くらいに突然、「そうそう、大晦日のイベントなぎさんも出てもらうことになったからヨロシク!」と言われ、あわててフリを入れたという状態だったので。でも、こういうちょっと無理言われてサラッと「じゃヨロシク!」って言われる感じ、嫌いじゃない……っていうか、むしろ好き。なんか、嬉しい。なんか、ドキドキする。そう、これって、「物事に真剣に取り組みたい」っていう私の希望どおり、ってことなんですよね!! 

あー、やっぱり、日常にドキドキがなくちゃ。ほんの少しのスリルがなくちゃ。ハッキリ言って、それしか考えてないかもです、私。実際。

だから、さらなるドキドキを求めて、頑張って話題の3D映画『アバター(avatar)』も見に行きました。眼精疲労にも耐えました。確かにドキドキもしました、でもやはり映像でのドキドキには限界があって、精神的ドキドキの方が強烈だと思うのですよ。

いや、あの映像は凄いですよ、もちろん。だけどストーリー自体があまりに「フツー」すぎて(つまり、マトリックス+ナウシカ+ラピュタ+地獄の黙示録という意味で)カンタンに先が読めてしまうため、精神的な意味でのドキドキがあまりなく。だいたい、唯一「うわ〜〜こりゃフツーじゃないなーー!!!」とドキドキさせられたのがナヴィ星人のヴィジュアル(しかも3D)、っていうのもどうなんだろう、とか。「一体どんなマーケティングをしたらあのヴィジュアルデザインになるんだ?」とか、そこに興味シンシン。まぁ、ドキドキのさせ方としてはあのヴィジュアル(しかも3D)っていうのはアリだと思いますが、それにしてもスゴイな、と(笑)。マーケティング大国アメリカ。もしかして、あれこそが「マーケティングの行き着く先」なのだろうか? ……なんて、でもまぁああいう映画にそんな事を言うのも野暮というものなんで、「面白かったです♪ みんなも一度は見たほうがいいよ! 必見デス☆」と、女子ブログっぽく言っておきたいと思います。(いろんな意味で)必見♪ (何のエントリーだったんだっけ……)




■「和楽」ブログでも、新年の御挨拶を載せております。ぜひご覧くださいね。
こちら





 

【日舞】 先月、「小唄in神楽坂」で踊りました記。  〜もしくは、「ものまね」と「野望」、「技術」と「個性」について。

2009.11.30 Monday

今さら……なのですが、引越しバタバタで全然書けなかった、10月末に出演した「小唄in神楽坂」について、少しだけレポートしたいと思います。

主催は、小唄扇流師範の扇和やすさん(日本文化に関する文筆家・宮澤やすみさんとしても活躍されています)。毎年おこなわれているイベントで、私が踊りで「小唄in神楽坂」に参加させていただくのは、今年で4年目。

今年は初めて、「井嶋ナギ」ではなく、名取名「花柳なぎ嘉乃」で出演しました(→参『花柳流名取試験を受験しましたの記。』『名取試験を受験したときのキモノについて。』)。



当日の着物は、去年と同じく、祖母が娘時代に着ていた加賀友禅の中振袖と、丸帯を袋帯に仕立てなおしたものを着用。扇子は、名取試験のときに買った、銀もみを使用。髪の毛は、今回は、着物スタイリストの如月まみさんに教えていただいた、銀座のおねえさんご用達「ロサ美容室」に行ってみました! 30分もかからずに素晴らしい形に結ってもらえて、大満足♪





↑ 一応コレは、扇を鏡に見立てて髪のほつれを直す仕草の振り、です……聞き耳をたてているわけではありません……(上手な人だと、ちょっとした振りからも仕草の意味を感じさせるものなのですが!)



「小唄in神楽坂」の準備の様子や当日の緊張については、去年かなり詳しく書いたのではしょりますが(→参『「小唄in神楽坂」で踊りました記2 〜本番編。』『「小唄in神楽坂」で踊りました記1 〜振り付け編。』)、今年も4曲、自分で振り付けをしました……といっても、今まで師匠が教えてくださった様々な踊りのフリを参考にしたり、毎回チマチマと録画している「芸能花舞台」の映像を参考にしたり、毎月購入している雑誌「日本舞踊」の振り帳を参考にしたり。ええ、基本、「ひとまね」、です! 



でもこのひとまね、っていうのが、とてつもなく難しいんですよね……。玉三郎さんの映像を見てパクろうったって、玉三郎さんのまねができますか? ってことですから。私もお稽古で毎回、師匠の振りをガン見しつつまねしてますが、まるで別の振りです(泣)。

今の世の中、「個性」や「オリジナリティ」の重要性が言われていて、それはもちろんそのとおり間違いない、のですが、その「個性」や「オリジナリティ」を発揮する前提には、かなりの勉強や努力の結果習得した「技術」が必要、という事実についてはあまり言われていないような気がするのです。上記の踊りの例で言えば、玉三郎さんや師匠の踊りの「ものまね」をあるていど(完璧にとは言わなくても)できるくらいの「技術」があって、初めて、「個性」や「オリジナリティ」を発揮できるようになるのですよね。

そうそう、twitterでも書いたりしましたが、「R25」のインタビューで、作曲家の久石譲氏がこんなことを言ってました。

基本的に感性は信用しない。(中略)音楽っていうのは96%まで技術です。やりたいものがあってもそれをかたちにするには徹底した技術力が必要


本当は、こういうことは、around25ではなく、小学1年生くらいの子どもに言ってあげないといけないと思うんです。だって、そんなこと大人になってから言われたって、「もう遅いよ……」って場合もあるでしょうから。

でも、子どものときからかなり時間を費やしても、ダメなものはダメ、というのもまた真理で。私などは幼稚園から高校生くらいまでずっとピアノを習っていて、そこそこ練習してそこそこ弾けてましたけど、今ではもうお話にならないですし、もちろん今後も音楽でうんぬん! という気もないです。それよりも、ホントにピアノやりたくて今からでもどうにかしたい! っていう熱意のある人が今から始めたほうが、よっぽどスキルが身につくし上達するはず。

とにかく、大事なことは、何かをやるには勉強と努力による、あるていどのレベルの知識や技術が必要、ということだと思うのです。そしてその一方で、「いつか私ならではのオリジナリティを表現してみたい」という「野望」を密かに抱く、ということが大事なのではないかと、と。でないと、それはそれで、単に「お手本をうまくこなせるが偉い!!」という、つまんないくせに意外と傲慢、っていうズレた優等生になっちゃう。そう、その反動で、個性とかオリジナリティとか言われてる気がするのですよね〜、知識や技術ばかり磨く優等生はダメ、みたいな。

でも、本当にスゴイ人っていうのは、高いレベルの「知識」や「技術」を習得しながら「オリジナリティ」も持っているし、高いレベルの「ものまね」をこなしながらも「野望」をもっているものですよね。優等生でありながら、異端者、みたいな。その両方をもっているのが、一番望ましい状態だと、いつも思うのですが。

そんなわけで、野望をうちに秘めつつ、ものまね、おおいに頑張ろう! そう思うのでした。




なんて、話はそれましたが!

えーと、そんなわけで、宮澤やすみ(扇和やす)さんの弾く三味線と唄に合わせて、4曲踊りました。踊った曲は、『上手(うわて)より』『好きな人』『移り香』『春風さんや』。そのほかに、やすみさん一人で、さらにはお弟子さんと一緒に、さまざまな小唄をたっぷり披露。





↑ 扇和やすさん(宮澤やすみ)さん。一見マジメそうなのに、肩の力の抜けたトボけたトークをする方で、今回のイベントでもお客様を「え、ここ、笑っていいのか?!」な感じで戸惑わせていました(笑)。




↑ 扇和やすさん(宮澤やすみ)さんと、和やすさんのお弟子さん(美人)。彼女は小唄を習い始めて半年?くらいなのに、三味線をサラサラ弾いてらっしゃってスゴい。ちゃんと練習されてるんだろうなぁ〜。



小唄は、芸者さんがお座敷で旦那衆相手にしっとりつま弾いたものなので、色っぽくて情緒たっぷり。そんな色っぽい小唄の世界をぶち壊さないよう踊れたか、ちょっぴり心配ではありましたが……。いらっしゃってくださった皆さま、本当にありがとうございました!!

それから、日舞の稽古場の弟子仲間であり、TVドラマや舞台で活躍中の美人女優さん岡田明香ちゃんが、今回の「小唄in神楽坂」のレポートを書いてくださいました! →こちら。 &ここに載せた写真のほとんどを撮影してくれました! 明香ちゃん、ありがとう!!!






ところで。「小唄in神楽坂」主催者の宮澤やすみさんは、現在、小唄扇流の師匠として神楽坂でお稽古を開催しているほか、仏像や和菓子に関する文筆家としても活躍中。つい最近、新刊を2冊も出版されました! 




東京仏像さんぽ』(明治書院)

仏像といえば京都とか鎌倉……と思いがちだったけど、都内にもこんなに仏像がいるんだ〜! とちょっと驚き。ちょいと近所に仏像を拝みに行くのもいいですね。著者による本書の紹介は、こちらへ。





仏像にインタビュー』(実業之日本社)

こちらは、やすみさん自筆のマンガがついていて、とにかくすっごく面白い(笑)。笑いながら仏像に詳しくなれちゃいます! 吉祥天が飲み屋のママだったりして……笑える。。本書のマンガの様子は、こちらこちらこちらをご覧ください!




■関連記事。

「小唄in神楽坂」で踊りました記1 〜振り付け編。
「小唄in神楽坂」で踊りました記2 〜本番編。
花柳流名取試験を受験しましたの記。
名取試験を受験したときのキモノについて。
日本舞踊のススメ。 〜「日本人に生まれてきてよかった!」と思うためのささやかな提案について




 

【日舞】 花柳流名取試験を受験しましたの記。

2009.07.22 Wednesday

先日は、東京は虹が出て綺麗でしたね。そして、空がメラメラ燃えているような夕焼けも。見上げた空にいつもと違う美しさを見たとき、人って何かを祈るような心もちになるものです(あ、そういえば今日は皆既日食ですね〜! って、その時間帯、思いっきり寝てましたが)。で、私は右の空に大きな虹を、左の空に燃えるような夕焼けを見ながら、ある願い事をしました。ひとつは、「明日の名取試験に受かりますように」というお願い、もうひとつは……内緒です(たいしたことじゃないくせに隠すウザいヤツ)。







というわけで、先日の7月20日、花柳流の名取試験を受けてきました。「名取(なとり)って何?」と言われることもあるので、簡単に説明いたしますと。日本のさまざまな伝統芸能の、典型的なかたちとして、「家元(いえもと)制度」というものがあります。ある「流派(りゅうは)」を設立した「宗家家元(そうけいえもと)」を頂点に、多くの「門弟」が従い、その下にまたさらに「門弟」がいる……というピラミッド形の組織は、会社組織のようなものです。で、「名取」とは、ある一定以上の芸を認められた門弟に対し、その流派の「苗字芸名」を許可する制度のこと。こういった「流派」「家元」「名取」というシステムは、たいていの日本の伝統芸能には共通のものではないでしょうか。

私は、日本舞踊の大きな流派のひとつ、花柳流(はなやぎりゅう)を習っています(日本舞踊には200以上の流派があり、なかでも、花柳流・藤間流・若柳流・西川流・坂東流が、日本舞踊の五大流派と言われています)。ですので、私は花柳流の名取試験についてしか細かいことはわからないので、以下は花柳流についてのお話です。

花柳流には、「普通部」と「専門部」という2つの区別があります。「普通部」に合格すれば「苗字芸名」を名のること(=「名取(なとり)」)は許されますが、先生として弟子をとることは許されていません。よく「名取になったらお弟子さん取ることもできるんでしょう?」と聞かれるのですが、花柳流に関して言えば、弟子をとる資格(=「師範(しはん)」)を得るには、さらに「専門部」に合格しなければいけないのです。これに関しては、ほかのさまざまな流派や伝統芸能によって違っていて、わりと簡単に師範の資格を取得できる流派もありますし、そもそも師範制度は特になくて名取になればすぐ弟子をとることができる伝統芸能もありますし、特に法的に決められているわけではないので本当に“それぞれ”なんですよね。そんななかでも、花柳流はかなり厳しい流派。花柳流の「師範」の試験に合格するにはかなり高度な技術が要求され、合格者は毎年ほんのわずかなんだそうです。でもそれは、花柳流の芸のレベルを維持するために欠かせないシステムなのでしょうね。



もちろん、ひよっ子の私が受験したのは「普通部」。というわけで、花柳流の宗家家元先生のお稽古場、築地にある大きな風情ある日本家屋に、師匠の花柳美嘉千代先生に連れて行っていただきました。




初めての宗家家元先生の築地のお稽古場です!! 
さすがにこの門構えを目の前にして、ドキドキ。




でも、入るのはこっちから、です(当たり前)。



11時にお稽古場に到着し、その後松竹衣裳さんに着物を着付けていただき、控え室(大きな広間)でおにぎりを食べたりお菓子を食べたりして待機。試験は13時からスタート。今回の受験者は30人ほどだったので、15人ずつに分けて受験することになりました。

花柳流で名取試験を受けるためには、2曲の課題曲を、家元先生(4代目花柳壽輔先生)と幹部の先生の前で、踊るのです。課題曲は、常磐津「廓八景(くるわはっけい)」と、長唄「汐汲(しおくみ)」。「廓八景」は男の踊りで、「汐汲」は女の踊り。

以前も書きましたが(→「踊りの会でのキモノ。性別逆転のエロス。」参照)、日本舞踊は、何かの役になって踊るというのが普通なので、男の役になって踊るときは外股でキリリとカッコよく、女の役になって踊るときは内股で女らしく、というように性別を踊りわけます。ということで、試験ではその両方をちゃんとお稽古しているかどうか、チェックされるということなのです。



で、いざ列に並んで待っている時はさすがに緊張しましたが、私の師匠である美嘉千代先生が「大丈夫。精一杯踊らせていただきましょうね」と仰ってくださったことで、気持ちもスーッとラクに。確かに、「廓八景」も「汐汲」もそれぞれ1年くらいかけて稽古してきたんだもの(長すぎるかも笑)、やれるだけをやるしかないわよね〜と、ある意味で開き直りモードにシフトし、図々しいヴァージョンの人格が登場(笑)。って、度胸があるというより、土壇場になると過度のストレスを避けるために「過剰な期待をしないスイッチ」が入る癖がいつの間にかついちゃっているみたいで。これって、良いのか悪いのか。あまり良くない気もします。といってもやっぱり緊張したらしく、いつもは全然間違えたことのない自信満々の箇所をうっかり間違えました…。



にも関わらず、無事、「花柳 なぎ嘉乃(なぎかの)」という名前をいただくことができました! 家元先生(4代目花柳壽輔先生)の前に並び、固めの杯(さかずき)をいただき、免状や表札などをいただきました。



いただいた花柳流名取グッズ。



(左から時計回りに)「錦や」の花柳流揃い浴衣反物、花柳なぎ嘉乃の表札、「東扇堂」の花柳流揃い扇、名取免状、花柳流定紋入り素焼きの杯、「大阪家」の花柳流定紋入り紅白饅頭。



ちなみに、名取というのは、決して、「アタシ上手に踊れるのよ〜」なんていう意味ではありませんので、念のため。逆に、踊りを何十年と習っていて上手に踊られる方でも、名取試験を受けない方もたくさんいらっしゃいますし。名取というのは、とりあえず基礎のABCを習得してやっとスタート地点に立てました、というお墨付きのようなもの。そして、ここが何よりも大事なことなのですが、これからいよいよ、「いい踊り」「理想の踊り」を追求することが許される、ということなのです! 何しろ、一生追求できるものがあるなんて、本当にありがたいことです。「目標」や「理想」があれば、人は何とか生きていけますから。逆を言えば、「目標」や「理想」がないと、人は生きていくのが馬鹿らしくなるものなのですよね。私も、ここらへんは、いつもギリギリの瀬戸際で、結構ヒッシです。



とにかく、一大イベントが無事終了してホッとしました。それもすべて、師匠である花柳美嘉千代先生のご指導のおかげなのです。特に勤勉家でもない私が(イバることではないですけど)、月6回のお稽古に通い続けることができたということに、心から感謝しています。こんなに飽きっぽくて、自分にとって意味のない行為に耐えられなくて、無駄な時間にも耐えられないワガママな私が、8年間以上もお稽古を続けられている&しかも一生続ける気満々! でいるなんて、周囲からも驚かれているくらいですから。

つまり、それだけ日本舞踊のお稽古に魅力があって、好奇心や向上心を刺激されるものだということだと思うのです。だって、世間的に価値があるとされているかどうかということにそれほど興味のない私は、何よりも「自分にとって価値があるかどうか、自分にとって楽しい素敵なものかどうか」にすべての基準を置いているので。だからそうじゃなかったら踊りだって続いてないはずなのです、生意気なことを言うようですが。





築地にある、花柳流宗家家元先生のお稽古場にて。記念撮影。





「花柳舞踊道場」と、書かれている表札の前にて。

そう、「道場」、なのですよね〜〜。踊りって、決して優雅なだけじゃない、いわば“体育会系”の世界なのです。そんな場所に、私のような“文科系”“帰宅部”専門みたいな人間が足を踏み入れるとは。人生、何がおこるかわからないものだなぁ、としみじみ思いました。



■関連記事
名取試験を受験したときのキモノについて。



 

【日舞】 歌舞伎座での花柳流舞踊会 その2  〜カッコよすぎる仁左衛門と、凄すぎてよくわからないくらい凄い人について。

2009.06.10 Wednesday

前回(こちら)に引き続き、歌舞伎座でおこなわれた「三世宗家家元 花柳寿輔 三回忌追善舞踊会」についてです。




私が今回、最も楽しみにしていたのが、特別出演の15代目片岡仁左衛門さんと、3代目花柳壽楽さん(錦之輔改め)による、『連獅子(れんじし)』! 

って、先日、知人に「でね、そのとき仁左衛門がね」と話したら「誰ソレ?」と言うではないですか。「えーッ! 仁左衛門、知らないの? ニザエモン、だよ?! え、じゃあじゃあ、片岡孝夫は?!?! カタオカタカオ!!(意外と言いにくい)」 ……なんてムキになってもしょうがないので、一応解説しておきますと。

15代目片岡仁左衛門(かたおか にざえもん)は、歌舞伎界きっての二枚目役者。仁左衛門という名前を襲名する前は、片岡孝夫という名前で、玉三郎さんとの美形コンビで評判をとっていましたし、映画俳優としても(→松本清張の『わるいやつら』ほか)、テレビドラマ俳優としても(→伝説の歌舞伎座テレビ制作『眠狂四郎 円月殺法』『眠狂四郎 無頼控』ほか)、さまざまに活躍していた二枚目役者です。



パンフレットの一ページ。
(自分のものを撮影しましたが、書き込みについては無視してください…)


で、片岡仁左衛門さんと花柳流は、実は、親戚関係にあるのです。明治時代の講談師・3代目錦城斎典山には、数人の子どもがいました。そのうちのひとりの娘さんが「花柳流2代目家元・2代目花柳壽輔」と結婚し、もうひとりの娘さんが「13代目片岡仁左衛門」と結婚した。で、「花柳流2代目家元・2代目花柳壽輔」の娘さんが「花柳流3代目家元・3代目花柳壽輔」さんとなり、「13代目片岡仁左衛門」の息子さんが「15代目片岡仁左衛門(つまり現在の仁左衛門)」さんとなった。というわけで、現在の仁左衛門さんと、2年前にお亡くなりになった花柳流3代目家元は、いとこ同士だったのですね。

そしてさらに、今回、仁左衛門さんと一緒に『連獅子』を踊られた3代目花柳壽楽(じゅらく)さんもまた、同じ家系の方なのです。明治時代の講談師・3代目錦城斎典山には、数人の子どもがいました、というのは先にも書きました。そのうちの次男が、人間国宝にもなった舞踊家の2代目花柳壽楽さん。で、さらにその息子さんが、舞踊家の2代目花柳錦之輔さん。で、さらにその息子さんが、やはり現在、舞踊家として活躍していらっしゃる、3代目花柳壽楽さんと花柳典幸さんのご兄弟なのです。




というわけで(長かったですね……)、今回の『連獅子(れんじし)』は、その日のトリを飾る演目。15代目片岡仁左衛門さんが「親獅子」で、3代目花柳壽楽さんが「子獅子」。

『連獅子』という踊りは、歌舞伎と言えば……ということでよくイメージされる、長〜い赤い毛をつけた頭をブルンブルン振り回す、アレです。だけど今回は、白塗りの化粧も、長い毛のついたカツラも、豪華な衣裳も、きらびやかな背景も、何にもナシ。つまり、素顔に紋付袴だけで踊る、「素踊り(すおどり)」でした。素踊りは、衣裳やカツラでごまかしがききません。カラダの動きが、そのままお客様に見えてしまうので、衣裳をつけるよりもある意味で難しいものなのです。

実は、歌舞伎役者さんだからと言って、みんながみんな素晴らしい踊りを見せることができる、というわけではありません。役者の本分は演技なのだから踊りは適度に……という方も、たくさんいる(らしいです)。そんなこともあってか、会場に集まっていらっしゃる、踊りに関しては一家言ありそうなクロウトな方々の「役者さんがどんな踊りをご披露されるのか、ひとつ拝見いたしましょ」的な、何百という目。ビーーンと音がしそうなほど張り詰めた、場の空気。

そんななかで披露された、仁左衛門さんと壽楽さんの踊りは……素晴らしかった……。素晴らしすぎるくらい、素晴らしかった……。正直申し上げて、私、仁左衛門さんについては、「カッコイイ」とか「二枚目」とか「美形」とか「セクシー」とか姿かたちについてしか言及してこなかった自分が、心底、恥ずかしくなりました。なんて浅かったんだろう、私。なんて表面的だったんだろう、私。とにかく熱い熱いお二人の踊りに、半泣き状態。

え? 感動しすぎ? そうですよねぇ、たかが踊りでね。でもたかが踊りだと言おうと思えば言えるからこそ、それにあそこまで魂をうち込む人たちの凄さや純粋さが、胸に迫ってくるのですよ。どんなに良いお家に生まれようが、どんなに美しく生れようが、一人で汗かいて泣いて努力しなかったら、あんなに熱い踊りを見せられるはずないのですから。



で、素踊りだからカツラはつけてないわけで、髪の毛は頭にきちっとなでつけていたのですが。熱演というか熱踊……とは言わないでしょうけれど、あまりに懸命に踊りすぎて、後半、仁左衛門さんの前髪がひとすじ乱れ、ハラリ……と、額に落ちてきた!! その美しく色っぽい風情と言ったら!!! キャー。ホンっト、カッコよかったです!

って、結局また仁左衛門さんの姿かたちに言及してますけれどもね、それはしょうがないと思うのですよ。何事にも、一長一短がありますよね。美しく生れた者は、美しさで得をするのと引き換えに、何をしても結局、自分の能力や努力とはあまり関係のない姿かたちのことばかり言及されてしまうものなのです。それは美しく生れてしまった者の、宿命。というわけで、65年も二枚目をやってきた「二枚目プロ」の仁左衛門さんなら、そんな私の凡人な心の動きも、きっと許してくださることだろうと思います。……たぶん。




歌舞伎座の楽屋口に祀られている「歌舞伎座稲荷大明神」。
(画像は、美嘉千代先生よりいただきました)



それと、もうひとつ。私が今回見た踊りのなかで、一番「スゴイ……」と思った舞踊家さんは、長唄『木賊刈(とくさがり)』を踊られた、花柳寿彰さんです。スゴすぎて何がスゴイのかよくわからない、くらいの……。動きのシステムがよくわからなくて、ちょっとやそっとでは把握できないし、ただ歩いてるだけでも、不思議で玄妙な空気が立ちのぼってくるような……。

日本舞踊を見ていて、動きにメリハリがあってスゴイ! とか、エネルギッシュで圧倒された! とか、美しすぎて感涙! とか、そういう体験は何度もありますが、踊りを見ていて「謎めいていて何だかよくわからないのに、それが異様に気持ちよくて、もう何時間でも見ていたい……」と思わせられてしまったのは、初めての体験でした。目の前に、大きくて魅力的な「謎」が立ち現れた! という感じ。ただただ、舞台に釘付け。

こういう方を「名人」と言うのだろうなぁ、と思い、私の師匠である花柳美嘉千代先生に聞いてみたら、花柳寿彰さんは、花柳流2代目家元・2代目花柳壽輔さんの芸を継承している舞踊家さんで、花柳流のなかでも別格の存在として知る人ぞ知る御方、なのだとか……。や、やっぱり。この世には、こうした私の知らない凄い人がたくさんいらっしゃるのだなぁ、と思うと、この世で生きていくのがまた少し、楽しくなったのでした。 



■関連情報。
歌舞伎ブログ(こちら)でもお知らせしていますが、片岡仁左衛門さんがNHKのトーク番組で、6月歌舞伎座で上演中の『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』などについて語るそうです! 必見。
 NHK総合「スタジオパークからこんにちは」
 6月12日(金) 午後1:05〜1:55(録画放送)



(以上の記事は、井嶋ナギ歌舞伎レビューブログ『妄想と愛嬌のあいだで数時間。』にもアップしております)

 

【日舞】 歌舞伎座での花柳流舞踊会 その1  〜歌舞伎座だからって歌舞伎しかやらないわけではありません。

2009.06.07 Sunday

最近、歌舞伎座にばかり通っています。基本的にフリーなのでお家にいることが多い私、これだけひとつの場所にばかり通っていると、つい「歌舞伎座? ああ、あそこは私の庭ですけど」なんて言ってしまいそうです。人ってすぐ調子に乗るものなので、気をつけなくてはなりませんね。ちなみに庭っていったって、ほぼ3階限定ですけど。
(左の画像は、美嘉千代先生よりいただきました)

つい最近も歌舞伎座にいってきました! なぜかというと、5月に「三世宗家家元 花柳寿輔 三回忌追善舞踊会」があったからです。

って、「え? 歌舞伎座で踊りの会?」と思われるかもしれませんが、歌舞伎座って、実は、歌舞伎公演しかしていないというわけではないのです。歌舞伎公演はたいてい1ヶ月行われますが、厳密には初日が3日で千秋楽が27日というのが一般的。それ以外の日(つまり、月末の数日間)は、踊りの会などが開催されることもあるんです。もちろん、誰でも貸してもらえる、というような会場ではありませんが……。


ちなみにですが、昔は、丸山明宏(現・美輪明宏)と天知茂が出演した『黒蜥蜴』なんかも、歌舞伎座で上演していたそうです(1968年)。さらに言えば、一時期、歌舞伎が低迷した時期には、三波春夫の8月公演が20年も続いていたり、さらに中村錦之助の6月公演、大川橋蔵の12月公演なども恒例だったりしたそう(上村以和於・著『歌舞伎百年百話』より。←非常に面白い本です!)。今ではちょっと信じられません。そう考えると、現在のように、歌舞伎公演が歌舞伎座で12ヶ月ビッシリあり、さらには国立劇場でも、新橋演舞場でも、浅草公会堂でも、シアターコクーンでも、京都でも大阪でも博多でも……と、いたるところで歌舞伎が上演されている現在は、もの凄く、「古典芸能である歌舞伎が受け入れられている時代」ということなのかもしれませんね!



そんなわけですが、5月28・29日に歌舞伎座でおこなわれた「三世宗家家元 花柳寿輔 三回忌追善舞踊会」。初日に、私の日本舞踊の師匠・花柳美嘉千代先生が出演されるので、朝からいそいそと東銀座へ。

今回の舞りの会は、2年前に逝去された「花柳流(はなやぎりゅう)3代目家元・3代目花柳壽輔(じゅすけ)」さんの、三回忌追善舞踊会。ちなみに、なぜ2年前に亡くなったのに三回忌なの?と思われるかもしれませんが、三回忌とは亡くなってから満2年で行う法要のことです(マメ知識)。さらに念のためですが、「花柳流」とは、日本舞踊の大きな流派のひとつです。

会場でいただいたパンフレットには、現在の「花柳流4代目家元・4代目花柳壽輔」さんのご挨拶と並んで、斯界の重鎮たちによる追悼のおことばがズラリ……。たとえば、私が大好きな中村芝翫さん(歌舞伎役者。勘三郎の奥さんの父。人間国宝)や、坂田藤十郎さん(歌舞伎役者。中村玉緒の兄。人間国宝)、中村富十郎さん(歌舞伎役者。人間国宝)、片岡仁左衛門さん(歌舞伎役者)、河竹登志夫さん(演劇研究家。江戸明治の歌舞伎作者・河竹黙阿彌のひ孫)、常磐津英寿さん(常盤津の三味線方。人間国宝)などなど。

って、パンフレットで既に「キャー」となっていた私は、甘かった(笑)。だってこの踊りの会、花柳流のスゴイ人たち、つまり大幹部の舞踊家さんたちが一堂に集まって、凄いレベルの踊りを、これでもかっていうくらい次から次へと披露してくれたのですから……!! 



私の日本舞踊の師匠・花柳美嘉千代先生が踊られた、『季の移ろい』。

花柳流で活躍していらっしゃる若手舞踊家さんたちの群舞は、圧巻でした!






島田髷に、鮮やかな水色の引き着の、美嘉千代先生。
(画像は、美嘉千代先生よりいただきました)






昼の部と夜の部とあって、昼の部だけで5時間くらいある長丁場。ずっと舞台に集中しっぱなしで、もう息のつぐ間もないわ、長時間舞台に集中してるせいで目が痛いわ、長時間座ってるせいでお尻が痛いわ、だけどほんの数分でも見逃したくなくて席から離れられないわ、歌舞伎座を出た私、疲労でフラフラ〜でした(笑)。でもそれくらい楽しかったのです。ある意味では、歌舞伎公演より贅沢だったかも。

歌舞伎好きな方だったら、プロの舞踊家さんが出演する踊りの会も、ぜひぜひ行ってみてください。絶対楽しいです。会場に来ている方々はほぼ皆さん踊り関係者なので、独特のクロウトな雰囲気(?)もまた楽しいですよ(笑)!

というわけで、この舞踊会についてはまだ続きます♪

 

【日舞】 日本舞踊ユニット「和楽」公演 in 「雷(いかづち)」  〜もしくは、膨大な時間を費やしてきたひとの凄さについて。

2009.05.21 Thursday

先日、私の日本舞踊の師匠がメンバーである日本舞踊ユニット「和楽」の公演を見てきました! 場所は、六本木ヒルズ・アリーナ横の、ガラス張りのイベントスペース「umu」。「雷(いかづち)」というイベントで、日本文化をテーマにしたパーティでした。



日本舞踊ユニット「和楽」のメンバー。
左から、水紀さん、姫乃さん、リョウさん。

水紀さんは21歳で花柳流の師範を取得された若手舞踊家さん、姫乃さんはもと新橋芸者さん。リョウさんも花柳流師範で、実は私の日舞の師匠花柳美嘉千代先生です。



パーティには、各方面で活躍している一流の日本文化アーティストたちが集結。

第一番目は、尺八奏者のき乃はちさん。



尺八と、ヴァイオリンと、笛のコラボレーションが、カッコよかった! 武満徹の『ノヴェンバー・ステップス』(尺八と琵琶とオーケストラのための音楽)などでも既に証明されている、和楽器と西洋楽器の調和の妙。いや、調和の妙というよりも、ぶつかり合いの妙、か。悪い意味ではなく、良い意味での。緊張感もまた、人にとっては快楽なのですから。



そして、第二番目が、日本舞踊ユニット「和楽」の踊りと、太鼓奏者石塚由有さんの演奏のコラボレーション。

まず始めに、迫力の太鼓と音楽の、ソロパフォーマンス。



パンクなヘアスタイルと和太鼓が、なぜか凄くピッタリ。そういえば、中学の頃のちょっと不良な先輩たちって、必ず体育祭で応援団長やって和太鼓叩いてたなぁ(笑)。

もちろん、この石塚さんのパフォーマンスはハンパなく凄かったです。太鼓を叩きながらクルッと回ったりポーズ決めたり、「魅せる」んですよ〜! プロフィールを拝見したら、お父様が望月左武郎さんという囃子方さんで、幼少の頃から人間国宝・望月流宗家4代目望月朴清さん(人間国宝・堅田喜三久さんのお兄様)に囃子の手ほどきを受けていたそうですから、囃子のプロフェッショナル。


ちなみに、邦楽囃子(はやし)というのは、「太鼓(たいこ)・大鼓(おおつづみ)・小鼓(こつづみ)・笛」が基本の編成。さらにわかりやすく言うと、能舞台などで、黒紋付に袴をつけた男性がズラリと並び、「ポン!」という小鼓の音がして、「カーン!」っていう大鼓の音が入って、「イヨーッ!」「ハッ!」とか声をかけたりする、アレです。あれはカッコイイですよねー!

話はズレますけれど、私、邦楽囃子って大好きなんです。大学時代に、人間国宝・堅田喜三久(かただきさく)さんの『邦楽囃子大系』5枚組みCDを買い、ひたすら聞いておりました。なので、堅田喜三久さんは雲の上のあこがれの人なのですが、去年、私の日舞の師匠・美嘉千代先生が出演した国立劇場の楽屋で、何度もお見かけするやら、すれ違うやら、密かにひとりで「うわーー喜三久さんだー!!」とドキドキ(笑)。しかも、楽屋でみんなで何枚も写真を撮ったのを家に帰って見てみたら、なんと喜三久さんがうっかり写っちゃってるのを発見! 「キャー」と狂喜してたら、信じられないことに、PC操作ミスでよりによってその写真だけを削除してしまっていたことが後に判明。幻の画像と化しました……ショック。

というそんな私のトホホ話はいいとして。



いよいよ、「和楽」の登場です!!!





般若の面をつけ、紗の掛けをあたまからかぶった、三人の怪しい女たち。



と、クルリと回って面をとると……




美女、現る!!





鈴太鼓の踊り。
鈴太鼓(すずだいこ)は、『京鹿子娘道成寺』でもおなじみの小道具。中に鈴が入っていて、振ると音がします。





扇獅子の踊り。
扇獅子(おうぎじし)は、獅子ものの踊りでよく使われるおなじみの小道具。扇を二枚重ねたものに、牡丹の花と、獅子毛と、鈴と、布がついています。これはつまり「獅子頭」を象徴しています。これを目にしたら、「あ、あれは獅子の頭なのね」と思えば正解です。





ドラマティックな太鼓と音楽に合わせて、裾を引いて舞い踊る、色っぽい後姿。









ラストは、観客席に向かって蜘蛛の糸がパーッと放たれ、大歓声!!!!



ああ。日本舞踊って、楽しい! 踊るのも楽しいですが、見るのも本当に楽しい!!!! 私はちょっと用事があったので、このあとすぐに帰ったのですが、その後も、さまざまな方のパフォーマンスが目白押しだったそうです。



今回の「和楽」の踊りは、古典舞踊をベースにしながらも、誰でも楽しめるエンターテイメントとしての日本舞踊を目指したということでした。でも、こういう現代的な踊りを見せることができるのも、古典を基礎からしっかり学んでいる方々だからなんですよね。当たり前のことを言うようですけど、先ほど書いた和太鼓奏者の石塚由有さんもそうですが、やはり「基礎」の裏づけのある人というのは、新しいことをやっても、深みが違うし、厚みが違う。理屈じゃなくて、もう、空気からビシビシ伝わってくるんですよ! それまで「どれだけ膨大な時間を費やしてきたか」という重みって、想像以上に凄いものだと思うのです。何がどうとは説明できないけれど、圧倒されるものがあるんですよね。


話はちょっとズレますけれど、そう考えると、結局は人って、いつか自分の基本に立ち返るらざるを得なくなるのかもしれません。新しいことやりたい。いろんなことやりたい。アレもコレも試したい。でも、結局、「今まで、自分は何をやってきたんだろう? 何に心をくだいてきたんだろう?」。そう考えざるをえなくなる。なぜなら、「それに関してなら、私には基礎がある」と確信できるから。確信をもてないことをやり続けるのって、実は意外と難しいことなのですよね。。なんてことを言う私ですが、じゃあオマエの「基礎」って何よ? と問われたら……。さて。「読むことと書くこと」と「コレは何?アレは何故?」と「日本文化のフシギについて考えること」だろうか……(苦しい)。

あ、日本舞踊に関しては、数十年後に「私の基礎には踊りもあります」と言える自分を夢見て、20代から始めました。最初から長期戦覚悟で(笑)。そう、「基礎」は今からでもつくれる、のです!! 結果さえ焦らなければ。




おまけ画像1。
和楽のリョウさんよりいただいた画像。

姫カツラ!



おまけ画像2。
和楽のリョウさんよりいただいた画像。

名画『怪描有馬御殿』の入江たか子姫を彷彿させるカンジで、スバラシすぎるショットかと!!



おまけ画像3。

パーティ「いかづち」を主催された方がはいていたスニーカーがとても珍しくて、司会をされているときに思わず撮影。実は今回のパーティを企画された一人でいらっしゃる原宿のファッションブランド「義志(よしゆき)」の商品で、「義志足袋(よしゆきたび)」というものだそうです。通販でも買えるそうです→こちら




■日本舞踊ユニット・「和楽」 × 和太鼓奏者石塚由有さんの公演があります!
 みなさまもぜひ……!

6月7日 19時〜
なだ万 アプローズ 新宿高野店
ステージチャージ無料。

なだ万 アプローズは、老舗料亭「なだ万」チェーンのひとつ。和とイタリアンを融合した料理を楽しみながら、選び抜かれたステージを鑑賞できる、エンターテイメントレストランです。




 

【日舞】 日本舞踊のススメ。 〜「日本人に生まれてきてよかった!」と思うためのささやかな提案について

2009.03.31 Tuesday

桜が咲き、コートがジャケットに、カシミアがコットンに、身体も心も少しずつ軽くなるこの季節。猛烈に「身体を動かしたい!!!」という激しい欲求におそわれ、いつものピンヒールをスニーカーで蹴っとばして部屋を飛び出し、あちらこちらでピョンピョン飛び跳ねている昨今です。

……って、こないだまで思いっきり冬眠してたくせに、何。この変わり身の早さというか、別人格がイキナリ憑依する多重人格なところ、我ながらちょっと気に入ってます(お目出度いです)。だって、いつも同じ人格やってなきゃいけないなんて、つまらないじゃないですか? 「私はこういう人」って、自分で決め付けないほうが、よいですよー。周囲はちょっとイヤがるかもしれませんが、そんなの気にしなくって大丈夫! 自分が退屈しないで楽しく生きることのほうが、100倍も大切ですから。私は時と場合によって、コロコロ人格変わっております。でも他人から見ると「変わってないね…」だったりするらしいので笑、あくまでも本人意識の問題。
(左上は、日舞仲間のMちゃんが祇園甲部「都をどり」で撮影してくれた、舞妓ちゃん画像)



楽しく身体を動かす方法って、いろいろあるかと思います。ジムに行ったり、ジョギングしたり、テニスやサッカーとか、ヨガとかピラティスとか。私の場合は、踊ること! です。踊るといっても、超自己流ですけど、別にいいんです、楽しければ。他人を喜ばせるためのダンスではなく、自分が自然に笑うためのダンスなので(って、他人に笑われてるかもしれませんけど笑)。あ、でもそんな私でも、一時期、バーレスクダンスの女王TAMAYOさんの「バーレスクダンス講座」に通ったこともありました〜(いや、TAMAYOさんのオーラが凄かったです……ホントに!)。

それから、そんな自己流ダンスのほかに私が大好きなのが、日本舞踊。習い始めてちょうど8年目になるくらいですが、やっと最近、「日本舞踊を踊るって、こういう感じかな……」という感触をつかみかけてきたように思います。と言っても、日本舞踊という大きな花の茎に生えてる柔毛の末端1ミリに触れるくらいの感触、ですけど。って、ずいぶん時間かかってます(笑)。

でも、何かがカラダに染み込んでいくには、やっぱり時間がかかるものなのではないでしょうか。英語の習得なんかと同じように(って、習得したこともないくせに言う笑)、なだらかなラインを描いて少しずつ上達するというよりも、あまり変わりばえのしない停滞期間がずっと続いて、あるとき突然、「あ、今、ちょっと、分かったかも!」というブレイクスルーが訪れる。だけど、その後また変わりばえのしない期間がずっと続いて、またブレイクスルーがイキナリ訪れて。で、また停滞期間が続いて、また何かが分って……っていうことの繰り返し。モノゴトって、そんなふうにヒトのなかに染み込んでいき、そんなふうに上達していくものなのではないか、と思うのです。



踊り、ダンス、っていうと、つい西洋的なものを思い浮かべられがちなので、「日本人は踊りが苦手だ、なぜなら日本人はシャイだから」という単純な発想をされることが多いかもしれません。でも、日本人は、昔から踊り好きな民族です。断言! 鎌倉時代に仏教と踊りが合わさった念仏踊りが大流行したそうですし(それが盆踊りの源流と言われてます)、歌舞伎舞踊だって昔は見ているほうも一緒になって踊っていたそうですし、昔の日本映画を見るとお座敷では芸者さんとお客さんは一緒になって踊ってます(つまり、見てるだけではなかったのです)。

だいたい、踊り好きじゃない民族を探すほうが、難しいくらいですよね。だって、音楽と踊りって、人間の原始的な衝動に基づくものですから!



だけど今、日本の踊りには、盆踊りや阿波踊りのようなその土地の踊りと、役者や舞踊家による歌舞伎舞踊とがあると思うのですが、どちらも現在では日常的なものになっているとはいいがたい状況。確かに、子どもの頃、盆踊りの練習は毎年やりましたけど、夏祭りの時だけですし、音楽は演歌ですし(って、演歌は演歌でよいのですが、それはまた別の話で)。特別な環境で育たない限りは、日本舞踊も三味線音楽も、特に縁がないのがフツウです(ちなみに、私は全く縁がありませんでした)。

その結果、「日本古来の踊りや音楽なんて、何やってるんだかよくわかんないし、自分が踊ったり演奏したりできないのはもちろん、それを見たり聞いたり味わったりすることさえできないし興味もない」って……、とっても寂しいことじゃないでしょうか? それは、たとえば、フラメンコの踊りや音楽をサッパリ理解できないスペイン人とか、インドの踊りや音楽をまったく知らない上にむしろ古くさいものとしてバカにしているインド人、みたいなもの。それって、単純に、とっても寒々しい感じがしませんか? どうしてそうなってしまったんでしょう?

やはり、モノゴトを理解し楽しめるようになるには、そのモノゴトがヒトのなかに染み込んでいくための、「適切な訓練」と、「ある程度の時間」が必要です。だから、今の私たちが、日本の古くからある踊りや音楽を、自然に楽しむことが困難であるとするならば、それは単に、ある時代までは確かにあったそうした環境や習慣が与えられなくなってしまったから、ということに尽きるんだと思うのです。

じゃあどうしたらいいのか? ということになってしまうのですが、じゃあどうしたらいいのかというと……、自分でひたすら見たり聞いたりやってみたり、するしかない。他人や環境が自然に与えてくれないのならば、自分で自分に与えてあげるしかありません。って、至極あたりまえな、結論。教育のせいだ政治のせいだ戦争のせいだ何とかのせいだって言ってたって時間の無駄ですものね、時間は有限ですから。
(右上は、5年くらい前に日本橋三越での神楽坂芸者の踊りの会での画像)



そこでぜひぜひオススメしたいのが、歌舞伎公演や、日本舞踊の会など、プロレベルの舞台を実際に見に行くこと、です。DVDやCDもよいのですが、直接見るのと比べたら、確実に体験の濃度が10分の1くらいに薄まってしまうので、直接見るのが絶対にオススメ。

歌舞伎っていうと、お芝居のほうばかり注目されがちで、踊りの演目はちょっとした箸休めのように思う人もいるかもしれませんが、とんでもないです〜、歌舞伎のキホンはあくまでも踊りにあります。歌舞伎役者さんにしろ、舞踊家さんにしろ、プロの方の踊りは凄い、です! 鳥肌、立ちます。涙も出ます。それに、日本の音楽(特に三味線音楽)は、踊りのために作られたものが多いので、踊りの舞台を見れば、日本の踊りと音楽の両方がカラダにぐわ〜〜っと沁み込んできます。一石二鳥。

つまり、私が言いたいのは、歌舞伎舞踊や日本舞踊は、特別な環境にいる人や、特殊な好みをもった特殊な人のものではない、ということなのです。日本の踊りは、日本人みんなのもの! バレエやミュージカルを見るように、気軽に日本舞踊を見に行っていいのです!(大昔の私は、シロウトが気軽に見に行っちゃいけないんだと思っていましたが……) もちろん、自分もやってみることができるなら、こんなに楽しいことはありません。「日本人に生まれてきてよかった」と、心から思えるのって、理屈抜きで嬉しいものですよ〜。



だって、どう考えたってどう見たって、日本人に生まれて日本に育って日本語で暮らしているんだもの。いくら海外のものをせっせと摂取したって、自分が日本人であることに変わりはなく。だったら、海外のものと同じように、日本のものも大事にして、同じように良さを認めて、より自分を活かしていきたいですよね。じゃないと、「私、フランス人に生まれていれば良かった……」なんてことになっちゃったりして、それって、もの凄くカッコ悪いじゃないですか(笑)。あ、でも、「そんなカッコ悪さなんて構わない、私はフランス人になりたいんだから放っておいて頂戴!」って方は、それでもいいと思います、そういうのもアリだと思います!(念のため) 

でも私は、日本人として生まれて育った以上は、日本人としての誇りと矜持をもって生きていきたいと思うのです。それは、闇雲に「オレは日本人だ!」と威張ることでもないし、今現代の日本について知っていればいいとか、教養知識学問があればいいっていう単純なものでもない。過去から現代に至る長い時間のなかで何がどのように素晴らしいのかを身に沁みて理解し、そして現代から未来に向かってそれをどのように活かすことができるのかをイメージする、そんな過去・現在・未来という広いパースペクティヴをもったとき、やっと立ち現れる、誇りと矜持。それを持つことは、東京オリンピック開催より急務の国家的課題なのではないかしら……なんて偉そうに思いつつユニクロのフリースに首をひそめる、花冷えの夜なのでした。




というわけで、確実に行く予定の“踊りイベント”私的メモ。以下。みなさまもぜひに……!


◆「四月大歌舞伎」@歌舞伎座
4月2日(木)〜26日(日)
→詳細はこちら
夜の部の『廓文章』は、踊りの演目ではありませんが、玉三郎の花魁(おいらん)夕霧と、仁左衛門の放蕩色男(当然、ちょっとバカ)伊左衛門という、美形コンビの滑稽なやりとりが絶品に決まってるので必見。踊りもちょこっとあります。


◆「五月大歌舞伎」@歌舞伎座
5月2日(土)〜26日(火)
→詳細はこちら
踊り好きにはたまらない演目がズラリ。
人間国宝の富十郎と魁春による『寿猩々(ことぶきしょうじょう)』、人間国宝の芝翫(大好き!)による『手習子(てならいこ)』、菊之助と松緑と尾上右近の若手3人による『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』、菊五郎と時蔵による、悪党・小猿七之助と御殿女中・滝川のお芝居を舞踊化した『夕立』、海老蔵と菊之助と松緑による『鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)』などなど。私、全部見ます(笑)!


◆「三世宗家家元 花柳寿輔 三回忌追善舞踊会」@歌舞伎座
5月28日(木)〜29日(金)  11:00〜  16:00〜
朝から晩まで踊り漬け!の素晴らしい2日間。
私の師匠花柳美嘉千代先生が、28日昼の部の『季の移ろい』に出演されます! また、29日昼の部には仁左衛門さんと花柳寿楽さん(錦之輔改メ)の『連獅子』も! そのほか、花柳流の凄い方々が勢揃い! 全部、見たいです……。


◆「錦会」@国立劇場 大劇場
4月29日(水)
→詳細はこちら
人間国宝であった故・花柳寿楽さんの家系である、花柳錦之輔さんと花柳典幸さんの踊りの会です。


◆「放蕩娘〜vamp〜の青空マーケット」@青い部屋
5月31日(日) 昼下がり〜夕飯時まで
バーレスクダンサーであり女優であるTAMAYOさんの、ダンスショウあり、フィルム上映あり、フリーマーケットあり、浅草ロック座からの掘り出し物あり?!な、日曜の昼下がりイベント。
→詳細はこちら
ちなみに、↑上記のページでは、金子国義氏撮影の写真集『Drink Me Eat Me』でモデルになったTAMAYO姐さんの美しい裸身が拝めます…! ゴージャス&カッコイイ! 眼福ー! (しかも『色っぽいキモノ』をオススメBOOKにあげてくださってる!! 嬉しすぎ…!)


◆「春風」@代々木公園 野外ステージ
4月4日(土)13:00〜20:00、5日(日)12:00〜19:30
→詳細はこちら
フリーパーティ「春風」が、久しぶりに開催されるそうです〜! 今年は渚ないし、お花見がてらフラリと行くのがいいな♪ 双子のマルチーズのマルちゃん(ニセ)連れていく予定。


◆「小扇会」@海老名市文化会館 大ホール
4月12日(日) 12:30〜
私の師匠・花柳美嘉千代先生のお弟子さん一堂、小扇会に参加させていただくことになりました。えーと、私は、長唄『汐汲』を美人女優の岡田明香ちゃんと、常磐津『廓八景』を一人で踊る予定です(って、この2曲、思いっきり名取試験の課題曲。ついに試験を受けることになったので、目下、特訓中です……)。よかったら見に来てくださいね。



 

【日舞】 「小唄in神楽坂」で踊りました記 2  〜本番編。

2008.11.04 Tuesday

先日(こちら)に引き続き、「小唄in神楽坂」のレポートを。本番編です。


そうそう、忘れてはいけないのが、当日の衣装です。私がもっている地味なキモノの中では唯一華やかな、加賀友禅の中振袖にしました。祖母が若い時に着ていた古いものなのですが、昭和初期独特のロマンティックな色合いがとても気に入っています。大学の卒業式、発表会、法事、結婚式、パーティと、もう何度も着ているお気に入り。なんですけど。今年生まれて初めて、「振袖、着てもいいのか?! 私?」と自分にツッコミを入れました。ま、いいでしょう、舞台ですからー。

帯は、これも祖母が若い時に締めていた丸帯を、袋帯に仕立て直したものです。普段は、普通のお太鼓か角出しに締めることが多いので、「え〜と、二重太鼓ってどうやるんだっけ?」と、石田節子さんの本で確認しつつ(笑)、二重太鼓に締めました。

そしてその後、浅草へ。何故、浅草へ行ったかと言いますと、日本舞踊のお弟子仲間のお姐さんに教わった、「夜会巻き」を上手に結ってくれる美容院に行くため! 前髪と後頭部を大きくふくらませる本格的な夜会巻きって、結い慣れてないと難しいんですよね。普通の美容院では、うまく結ってもらえないことが多いんです。

以前、近所の美容室に「夜会巻き、結えますか?」と何度も念を押したところ「できます」っていうからお願いしたら、相当ダサいアップスタイルにされて驚愕したことがありました。夜会巻きは「面」とをにかく美しく作って、毛先は中に入れ込むもの。なのに、パサパサと毛先を散らし始めるじゃないですか! しかも挙句の果てにその美容師、「毛量が多すぎて結いにくい」とか、私の毛の多さをグチり出す始末! 緋牡丹お竜並みに簪をギラリと構えて「もう一度言うてみたらどぎゃんな!」(何弁?)とか言ってやろうかと思いましたが、友人の結婚式の時間ギリギリだったんでグッと飲み込み、細かな指示を出して、何とか“夜会巻きもどき”にしてもらいましたが……。

そんな失敗体験をふまえ、今回はそれ専門の「ミクニ美容室」で夜会巻きに結ってもらって、大満足! しかもこの美容室では、「毛量があるからすっごく結いやすいわ〜」って言われましたよ。ほらー。そして常連のおばさま方に、「お若いのに自分で着物を着るなんて偉いわねぇ〜」とおだてられ、どっちかと言うと「お若い」というタームにいい気分になりながら店を出たのでした。

↓これが大満足ヴァージョンの夜会巻きです。





会場は、神楽坂の毘沙門天に併設された書院。「小唄in神楽坂」自体は今年でもう5年目ということで、宮澤やすみさんと、扇流家元扇よし和先生の息はピッタリ。吉原の唄、色気のある唄、神仏をうたった唄、と続いて、ついに出番となりました。扇よし和先生の唄とやすみさんの三味線に合わせて、踊りスタート。踊った小唄は、以下の3曲。

『移り香』
移り香や たたむ寝巻きの衿もとへ   
ひとすじからむ こぼれ髪
帰してやるんじゃなかったに   
ふくむ未練の 夜のさかずき

 『浮世木枯らし』
風が吹いたね 浮世の風が  
肩よせ合って しのいだね
離れられない 二人になって  
静かな今も いっしょだね
ずっとずっと いっしょだね  
浮世木枯らし 味なもの

『江戸祭り』
本祭り 笛や太鼓に誘われて   
白足袋姿 ねじり鉢巻
ワッショイワッショイ 祭りだワッショイ
今年ゃ神酒所で鏡を抜いて そろい浴衣もにぎやかに 
色と酒との両袖を つなぐ廓の染模様 
隅田川さえ 棹さしゃとどく なぜに届かぬ 胸のうち
今宵逢うとの徒(あだ)ごとに 顔も紅葉の祝い酒
頭が音頭で オンヤリョー 
色若衆や手古舞が よい声かけて町々に
江戸はえぬきの 派手姿


こんな感じで、小唄の歌詞って、色っぽいものが多いんですよね。「たたむ寝巻きの衿もとへ ひとすじからむ こぼれ髪」とか「隅田川さえ 棹さしゃとどく なぜに届かぬ 胸のうち」とか、切ない恋心をうたった曲が多い。実生活が貧弱なのでそんな思いを踊りで体験できるのはなかなか楽しいです(笑)。

そもそも小唄は、お座敷で芸者さんと一緒にサラリと唄って楽しむものだったそうですから、そうした色恋をうたった唄が多いのも当然でしょう。って、それを言うなら、江戸時代の代表的な音楽って、ほとんど色恋をうたっていますから〜。「唄もの」の代表である長唄とか、「語りもの」のひとつ浄瑠璃系統の義太夫常盤津、富本、清元なども、お芝居や色街などで発展した音楽ですから、やっぱりうたっている内容は、基本的にほとんど、色恋。

ちょっと話はズレますけど、こういう近世の文化に接すれば接するほど気付かされるのが、日本において(少なくとも江戸時代において)色と恋は同レベルのもので(つまり肉体だけとか精神だけとかそういう区別にたいして意味はなく)、それは遊びであり贅沢であり文化であり……っていう“余剰のもの”だったのだなぁ、ということです。基本的に、色恋は遊び。そう言ってしまうと、いろんなことがスッキリするような気がします。

もちろん、遊びと言っても、さまざまなレベルがあるし、さまざまな質があります。ここで言う遊びとは、別にチャランポランとか軽くテキトーにとかっていう意味じゃなくて、言ってみれば、趣味、遊芸、芸術みたいなものと同じようなもので。で、それはその人の資質によっては、遊びが実質に取って代わってしまうこともあるし、行き過ぎれば、死に至る遊びになってしまうこともある。たとえば江戸時代に流行した情死・心中というものだって、色恋という遊びに遊びの範疇を超えたものを担わせてしまった結果でしょうし、それは、「コレ」と一途に思い込んだ遊びや芸に人生全てを捧げてしまって、その結果身を滅ぼす、みたいなことと同じようなことだったのではないか、と思うのです。

そう考えると、遊びって、怖いですね(笑)。でも怖いからこそ、価値があるし魅力があるとも言える。だって、どうせ死ぬ運命にある身だもの。だから、死がそれほど遠くはない世界に住んでいた人たちのほうが、現代のように人生80年と高をくくっている人たちよりもずっと遊びの意味や魅力を知っていた、のかもしれません。



踊り終わって、楽屋で汗を乾かすのと化粧直しに必死になっている私の耳に、舞台で引き続き演奏しているやすみさんと扇よし和先生による小唄が心地よく聞こえてきました。「なまじあなたに会ってから 涙の味を知りました こんな思いをしみじみと 話す相手は影法師」っていう『裏座敷』や、「初手は岡惚れちょっといいお方 中ほどはただもう足駄で首っ丈 今じゃ 好きで憎くて 憎くて好きで なくちゃならない好きな人」っていう『好きな人』など、艶っぽい歌詞に耳を傾けながら。


着物姿がいつも色っぽくて粋な扇流家元扇よし和先生(左)と、まるで夏目漱石の小説に出てくる人のごとく(笑)袴が非常に似合う宮澤やすみさん(右)。


そんなわけで、無事「小唄in神楽坂」が終わりました。いらっしゃってくださった皆様、本当にありがとうございました! お忙しいなかわざわざ来てくださるって、本当にありがたい嬉しいことだと思ってます。本当に、大人になると、時間って貴重ですから……。また来年もやろうとやすみさんが仰ってくださったので、もし開催することになりましたら、またいらっしゃっていただけると嬉しいです。



◆「小唄in神楽坂 顛末記
  イベント主催者である宮澤やすみさんのHPに、
  顛末記を掲載させていただきました。


◆キモノイベントのお知らせ。
 11月23日(日)に開催される「床の間」(@nakano F)というキモノイベントにて
 トークショウに参加することになりました! 詳細はこちらです。
 お時間ありましたら、ぜひいらしてくださいね。







 

【日舞】 「小唄in神楽坂」で踊りました記 1  〜振り付け編。

2008.10.29 Wednesday

先日の10月25日、「小唄in神楽坂」に踊りで参加させていただきました! ので、そのレポートを。

今年で5年目となる「小唄in神楽坂」。主催者は、和菓子や仏像などの日本文化を専門とする文筆家の宮澤やすみさん(著書はこちら)。彼は、小唄扇流の名取となり、現在では「扇和やす」というお名前で小唄界でも活躍されています。もともと同じ日本文化系のライターとして知り合った……というか、実際は、私が伊勢丹で着物を売っていた(そんな仕事をしていたこともありました〜)時代に、知人を介してお知りあいになったのですが。

その後、私はベルリンに行ったり、六本木ヒルズで働いたり、渋谷のホテル街に住んでみたり、千葉でアメ車乗ってみたりみたいなわけのわからない日々を経て、自称ライター(誰でも最初は「自称」です…)になったのですが。仕事もたいしてなくブラブラしてた私に、宮澤さんが「小唄イベントで、踊らない?」と、かる〜く声をかけてくださったのでした。それが約3年前。

その小唄イベントには、毎回、小唄「扇流」の二代目家元である扇よし和先生が出演されているのですが、その素晴らしい歌声と三味線演奏は、いつ聞いても惚れ惚れ。。私も小唄、習いたいー! って、そう言えば、私も昔、三味線を弾いていたことがあったんでした! 私が通っていた大学に筝曲部(そうきょくぶ)という、琴と三味線と尺八の三曲合奏のクラブがありまして、そこで三味線を弾いていました。三味線の弦を押さえたり擦ったりすると、左の指の爪が摩擦で削れてしまうんですが、これを「糸道」と呼びます。それがとにかく嬉しくて、ただもう爪にできた「糸道」が誇らしくて、何度も何度も眺めていたなぁ。あの頃は二十歳そこそこだったというのに、マニキュアだとか爪のお手入れだとか、そんなことはどーでもよかった。でも、今だって本当は、マニキュアより「糸道」つくりたい……。


そんなわけで。今年の夏頃に、「今年はこれで踊ってね」と宮澤さんから、小唄の音源が送られてきました。今年は、『移り香』『浮世木枯らし』『江戸祭り』の3曲。さっそく音源をiPodにコピーし、足袋をはいて、浴衣を着て、イヤホンを耳に入れて、iPod本体を懐に挟みこんで、鏡の前に立ち、振り付け作業スタート。曲の感じとか間合いとか歌詞を考えながら、今まで私がお稽古場で師匠から教わってきた振りを、組み合わせたり、アレンジしたりして、振り付けていきました。

今回、自分で振り付けをしてみて、ちょっとした驚きがありました。それは、曲に合わせてを何となく体動かしてみると、自動的に踊りが体から沸いてくるような不思議な体験をしたこと。あるひとつの振りをすることで、これまで師匠から教わった振りのひとつひとつ、もらった言葉のひとつひとつが、ザザーッと自分の体の上に蘇ってきて、記憶がぐわーっと体の上に染み出てきて、体が勝手に動いてしまう。そんな体験をして、自分でもちょっと驚いたのでした。あれです、プルーストの『失われた時を求めて』の、紅茶に浸したプチット・マドレーヌの味覚。それと同じようなものなのかもしれません。時空を超えて過去の記憶を立ち上げる装置。それは自分でも思いもよらないところにジッとひそんでいて、ある日突然、目の前に現れたりする。満開の桜、冬の晴れた日の乾いた空気、バッハの無伴奏チェロ組曲、金木犀の香り。そんな装置をまた一つ発見できて、小さな喜びを感じたのでした。


さらに今回は、大好きな玉様(坂東玉三郎さんです、もちろん)の踊りの振りを盗むことにもチャレンジしました! ……って、無謀すぎ(笑)。DVD「坂東玉三郎舞踊集」シリーズをスローモーションで見つつ、振りを研究しました。が。玉様はそれほど難しい〜〜っていう振りをしているわけでは決してない、という事実に遭遇。私も頑張ればマネできるような基本的な振りをしている……にも関わらず、玉様が踊ると、もうものすごく複雑で摩訶不思議な動きをしているように見える。なんで? 何なのこれは?! 

要するに、玉様がひとつの振りを踊る時の、腕の動き、扇子の動き、指先の動き、腰の方向、足さばき、肩の引き方、顔の傾け方、目線、すべてが緻密な分析と計算の上に成り立っていて、それをすべて同時に実行することによって、「別世界」が立ち上がってくる。そんな構造になっているみたいなのです。たぶん……。だから、あるひとつの振りがあったとして、それを私が踊っても「普通の人間がその振りを実行している」というだけですが、玉様が踊ると「普通の人間と違う動きのシステムをもった何かが踊っている」と言うしかないようなことになる。玉様に限らず、プロの方や名人と言われるような方は、そういう独特の「動きシステム」が出来上がっているんでしょう。

それは、別に踊りに限らず、何でも同じで。長い長い時間をかけて訓練したり考えたり試行錯誤したりしているうちに、脳内にその人だけの独特な神経回路が出来上がっていく。そのことによって、その人だけの独特な「別世界」を立ち上げることができるようになる。というか、正確に言えば、立ち上がってしまう、んだと思うのです。もう、否応なく。有無を言わせず。それが、アーティストとか芸術家の「個性」と言われるものなのではないでしょうか。

そしてそれは、もしかして、ある意味では「歪み」と紙一重なのかもしれません。もちろん、歪みと言っても、それは良い悪い、正しい正しくない、ということとは関係なくて。たとえば、ジョン・ウォーターズの映画に対して「悪趣味すぎる」という歪みを批判したって、全く意味がないですよね。村上春樹の小説に対して「登場する女が不思議ちゃんすぎる」と非難したり、岡本太郎の彫刻に対して「馬鹿っぽすぎる」と批判することに、全く意味がないように。そうした、良い悪い、正しい正しくない、といった一般的な規範を超えていくほどのもの、たとえば人の心を否応なしに動かしてしまうような、迫力や情熱や執着心や切実さのようなものがあるかどうか、それがその紙一重の境を区切るひとつの基準になるのかもしれない。そんなことを考えたりしました。



なんて、話はとびましたが。そんなわけで、自宅で振り付け&練習の日々でした。日本舞踊って何となくラクチンに踊っているように見えがちですけど、ずっと空気椅子状態(つまり中腰状態)で踊らなくてはならないので、かなり筋肉を使うんです(って、空気椅子なんて言葉、今の若者は知っているのだろうか?)。だから本番前は、連日、太ももとふくらはぎが筋肉痛に……。でも、筋肉痛って、いいですよね。筋肉痛だっていうのにムリして地下鉄の階段を上ったりするのが、またたまりません。しかも、そんな私の筋肉痛に周囲が全く気付いてないのも、何だか嬉しい(倒錯気味)。大好きです、筋肉痛!



……って、筋肉痛への愛を告白してどうする? 私はどこに行こうとしているのでしょうか。そんな疑問を静かに抱いたまま、当日の様子について次回に続きます〜。



 
前のページへ|次のページへ